クリスマスソングが街にあふれ
あわただしいときが走り抜けたら、もうお正月
かなしかったこともうれしかったことも
せつなかったこともおかしかったことも
さびしいわかれもたのしい出会いも
ささいなできごともおおきな紛争も
まるで一年のはじめからわかっていたように
思い出というカレンダーにきざまれる
16年前の寒い朝、多くのひとが死んだ
世界中にその死は報じられたが
そのひとたちの名前をぼくは知らない
16年前の寒い朝、多くのひとが死んだ
世界中にその死は報じられなかったが
その友人たちの名前をぼくはわすれない
がれきの下についさっきまでひろがっていた
コーヒーの香りと息づくいのちの朝が
凍りついたまま今もぼくたちを見つめている
ひとは夢をみるために生まれてきたのなら
死んでもなお必死に見つづける夢がある
がれきの下で止まってしまった時も
死者のひとみからこぼれる見果てぬ夢も
それから16年の時を刻んだこの大地を生きる
ぼくたちと共にあるのだと思う
1月1日から12月31日まで
時にはただの数字の並びが
知らない国の言葉に思えることがある
遠い遠いどこかの大地で
同じ星を見ているあなた
夜のむこうの冷たさが頬を凍らせ
必死で声を出そうとしているあなたの
冬の心はまだ詩にもならず歌にもならず
爆弾でこわれてしまった部屋の壁には
いつかのアイドルと
英雄の古びたピンナップと
肩を並べるように寄り添うカレンダー
あなたの記憶のぼんやりとした岸辺で
世界の悲しい一年がさよならしている
そして、ぼくはといえば
どこにいるのかもわからないあなたから
飛んできた手紙に手が凍る
桜の落ち葉が赤く燃えても寒い
元気を出して、さあ
と新しいカレンダーをめくる
1月1日から12月31日まで
時にただの数字の並びが
不思議な物語に思えることがある
遠い遠いどこかの駅の
ホームに立っているあなた
そして世界の希望の一年がやってくる