希望のない時代の希望をもとめて

クリスマスソングが街にあふれ
あわただしいときが走り抜けたら
もうお正月
かなしかったこともうれしかったことも
せつなかったこともおかしかったことも
さびしいわかれもたのしい出会いも
ささいなできごともおおきな紛争も
まるで一年のはじめから
わかっていたように
思い出というカレンダーにきざまれる

家々の窓はあたたかく曇り
だれもがいちばんせつなくなる
だれもがいちばんやさしくなる
だれもがいちばんかなしくなる
だれもがいちばんさびしくなる
特別な日々がはじまりおわる

ねがわくば今年の最後の日々が
平和と愛と希望と夢と未来に
つつまれていますように
そして、新しい一年が
銃弾が飛び交う窓から
空を見上げるこどもたちにも
焚き火の音がひびく広場から
星をかぞえるこどもたちにも
しあわせで安全な年でありますように
世界中のありったけの愛をかき集め
涙をながし手をつなぎ、歌いたい

今年は身近な人とのわかれとともに、山田太一さん、唐十郎さんをはじめ、わたしの青春時代から77歳になるまでの人生を伴走してくれたひとたちとの別れもありましたが、数少ないとはいえ、新しい出会いと発見もありました。その一方で、子どもの時から信じていた「戦後民主主義」にも何度かさよならと手を振りかけた年でもありました。
「他人もまた歴史をつくる」と言った哲学者がいましたが、まさしく数多くのストーリーが並走するSNS時代のただ中で、ややもすれば自分のストーリーと正義を時にかざしながら生きているような気がします。
歳を重ねると新しい年を迎えることは奇跡で、このかけがえのない奇跡に感謝しつつ、もう少し今年の最後の日々を丁寧に過ごせたらと思います。