どうにも止まらない芝居力・音楽力 劇団でこじるしーと楽団まぜこぜん

11月24日、第9回劇団でこじるしー「拳法学園~宇宙編~」が箕面メイプルホール小ホールで上演され、妻と箕面の友人たちと見に行きました。
「劇団でこじるしー」は箕面市障害者生活と労働推進協議会が運営する放課後等デイサービス&地域交流センター「さんかくひろば」から生まれた劇団です。
障害者の芝居というと、その内容が愛と感動に満ち溢れたいわゆる「感動ポルノ」になりやすいところですが、この劇団にはそんな予定調和的な台本も演出もなく、障害を持つ役者のそれぞれの役割が実に絶妙で、日常性と非日常性が行ったり来たりしながら、日常も非日常をも超える超現実が垣間見えるわくわく感が芝居全体にあふれています。
「さんかくひろば」の卒業パーテイで寸劇上演をしたことがきっかけで、利用者とスタッフの有志、地域の人が参加し、2013年に旗揚げ公演をして以来、とくに障害のある子どもたちの飽きることのない芝居への情熱によって年を追ってパワーアップしてきました。
そこではすでに、「障害者の自己表現」とか「障害のある人もない人も共につくる」という当初の劇団のコンセプトから大きく逸脱し、「どうにも止まらない」彼女たち彼たちの「芝居力」、「表現力」によって100人を超える観客を劇的空間に誘い込むのでした。
また、彼女彼らの日常に氾濫する流行り言葉とゲームなどの「戦闘ごっこ」を越えて、悪の集団と対決する「正義と友情」の物語がバトルありアクションありダンスありのドタバタ劇で演じられるのでした。
今年の演目は2014年に上演した「拳法学園」の宇宙編ということでしたが、正直に言えば上演時間から考えて物語が少し複雑すぎたようにも感じましたが、劇団員の「まずはじめに肉体ありき」という「特権的肉体」が爆発的に躍動し、スピードのある劇的空間をつくっていました。
現実の人間社会がそうであるように単純に正義と悪が用意されるのではなく、積み重ねられた「小さな悪意」と対決する「埃まみれの友情」が裏切りや嫉妬を赦しあい、諦めや絶望を分かち合う時、わたしたち人間は話し合いと助け合いによって共に生きる勇気を持てることをこの芝居から学びました。
それにしても、この劇団の役者たちの進化はすさまじく、わたしにとって春の「唐組」と、秋の「劇団でこじるしー」は見逃せない芝居になりました。
ところで、今回の公演は「劇団でこじるしー 楽団まぜこぜんの逆襲」というサブタイトルにあるように、同じく「さんかくひろば」から生まれた「楽団まぜこぜん」との合同公演で、芝居の前に「楽団まぜこぜん」のライブがありました。
ドラムスとボーカル、ギター、クラリネット、サックス、ピアノの5人編成のこのバンドは「楽団」という名にふさわしく、どこかなつかしいジンタのようで、ストリート音楽の趣きがあります。この楽団の魅力はなんといっても音楽への並々ならぬ渇望にあふれていることで、とくにボーカルとドラムスを担当するTさんの音楽を愛する想いがストレートに聴く者の心をわしづかみにしてしまいます。
この楽団の演奏を聴いていて、人間が言葉によるコミュニケーションを学ぶ前に、音によって気持ちを伝えたり合図を送ったりするところから音楽が生まれたのだと実感しました。
かつて肉体と心の区別がなかった時代から、風の震えと大地の地響きが音とリズムを生み出し、枯葉が心の階段を舞い降りるように音符が踊り、歌となっていく…。
音楽は愛を必要とする心から生まれ、愛を必要とする心に届くことを「楽団まぜこぜん」は教えてくれました。
この日は久しぶりにたくさんの箕面の友人たちと会いました。なつかしくもありましたが、箕面を離れてすでに15年という長い年月の間に街も時代も大きく変わり、思えば嵐のような日々の彼方へと遠くはなれ、年老いたわたしたち夫婦の今があることをあらためて思いました。

前日の23日は、大阪市の長居公園で開かれた「東北⇔関西⇔九州ポジティブ生活文化交流祭」に行きました。このお祭りはわたしがゆめ風基金でお世話になっていた2011年からつづくお祭りで、東日本大震災を機に大阪の障害者のグループが発案し、始まりました。
障害者のグループといっても多種多様で、それまでとくに東北の障害者のグループとはそれほどの交流がなかったのですが、被災障害者の支援活動と並行して東北の障害者を招いて顔の見える関係となり、その後に起こった災害から九州をはじめ全国各地の障害者と次々とつながってきたきっかけとなったこのお祭りも、来年で10年になろうとしています。
わたしはゆめ風基金を退職してからなかなか参加できないでいたのですが、2年ぶりに参加するとここでも懐かしい顔がたくさんありました。声をかけてくれる人たちも多く、透き通る青空のもとで心まで青く輝くようで、とても楽しい一日でした。

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