音楽が立ち上がる現場・祝春一番コンサート

毎年の5月の連休は唐組の芝居の後は大阪の服部緑地で行われる「祝春一番」を楽しみにしています。このコンサートは毎年ゴールデンウィークにロック、フォーク、ブルースなどのジャンルを問わずミュージシャンが集う大きな野外コンサートとして、関西のみならず全国的にも有名なコンサートです。
1971年、音楽業界に左右されず聴きたい音楽を自由に聴き、歌いたい歌を自由に歌う場を大阪の地に作り出そうと、天王寺野外音楽堂で第一回「春一番」が始まりました。
毎年開催されたこのイベントから数多くのミュージシャンが巣立ち、またこのイベントにかかわったスタッフの中から音楽事務所やイベント会社を立ち上げる人たちもあり、「自由であること」をキーワードに、既成の大衆音楽とはちがう地平をつくりだすことになります。
今年は最終日の5月5日に行きましたが、集結するミュージシャンも観客も、今の音楽状況をよしとしない人たちが「春一番」でみずからの音楽を鍛え、共に生きる仲間を得て既成の枠組みに挑戦する、新しいロック・ポップミュージックの荒野へと旅立とうとする姿がとてもいとおしく感じました。
そして1995年と2011年の大災害によって既成の価値観ではもはや幸せになれないことを知ってしまったわたしたちが必要とする歌がその荒野から生まれ、聴こえてくるまで、その旅は終わらないのだということを・・・。

昨年、「ピースマーケットのせ」のためにコンサートを開いてくれた友部正人は、自分の出演とは別に交流の深いシーナ&ロケッツの鮎川誠と、サービス精神旺盛な三宅伸治の三人による「スリー・キングス」というユニットで登場し、会場が盛り上がりました。
2人のロックミュージシャンとの共演では、見事にロックミュージシャンとしての友部正人の素顔を見せてくれました。一曲目はボブ・ディランの「Like a Rolling Stone」で、友部正人の訳詩で三宅伸治とのアルバムにも収録されていますがライブで聴くのは初めてでした。そして「一本道」は弾き語りとちがい、友部正人はもとより三宅伸治と鮎川誠のボーカルが心にしみました。そして、シーナ&ロケッツの名曲「You May Dream」では3人の友情があふれる演奏が感動的でした。
そして、何年か前からお目当てになっているヤスムロコウイチを、今年は友人といっしょに「かぶりつき」で聴き、堪能しました。
日頃あまり音楽を聴かなくなっているわたしは、このライブで遅まきながらファンになるミュージシャンやバンドと遭遇するのが楽しみで、3、4年前の曽我部恵一とともにヤスムロコウイチもそのひとりでした。そして、今年は金佑龍がその一人に加わりました。

「春一番」は1979年まで開催されたのを最後に休止しましたが、1995年に会場を服部緑地野外音楽堂に移して再開され、現在に至っています
1995年、再開にあたってプロデューサーの福岡風太氏は、大東京を中心にした日本の音楽状況はジャンルを問わず1970年代から少しも変わっていないと言い、次のようなメッセージを残しています。
「私たちも失うものが多くなり、ふっと気がつくとあれほど観たかったコンサート、聴きたくてうたいたかった歌をも見失っている。手間暇かけ、プロデューサーの熱意がこもったコンサートがない。血の通った音楽の現場がない。
だから私たちは、私たちが大好きだった音楽をもう一度確認すべく15年ぶりに<春一番>を開催するのです。」
彼の言葉にあるように「春一番」の魅力は自分の作詞作曲した歌を自分で歌い、数多くのミュージシャンが既成の枠組みではない独自の世界を構築し、まさに音楽の立ち上がる場に立ち会えることにあると、あらためて感じました。

『ああ素晴らしき音楽祭』アンコール "Like a Rolling Stone"

シーナ&ロケット ユーメイドリーム

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