自由より他に神はなし cafe「気遊」30周年記念フリーコンサート番外編2

わたしは関西フォーク・ロックと同時代を生きながら、彼女彼らの音楽をほとんど知らずに過ごしてきましたが、春一番と気遊さんのおかげで70の歳を重ねて恥ずかしながら初めて、「音楽」と出会うことができました。ほんとうに、間に合ってよかった。
ヤスムロコウイチの皮膚がむせび泣くような愛の歌、ロケット・マツのシンプルで繊細でもの哀しいピアノ、吉元優作の路地裏から聴こえる懐かしい「だいじょうぶ」ブルース、光玄の神戸の震災のがれきから風に吹かれ聴こえるひとびとの歌たち、松井文のくせになる声が以外にも都会ではなく草いきれと風のにおいを感じさせる歌、NIMAのダンスと川崎知のフリージャズサックスが時の記憶のふたを開ける怖い快楽、大塚まさじの歌は長い時のページを今の時代の表紙にゆっくりと書きうつすようでした。
そして、サプライズで現れた木村充揮の「天王寺」は、東京のような都市には決してならない大阪の街のワンダーランドを歌い、有山じゅんじは木村充揮とその後に登場する金森幸介と「自由より他に神はなし」とギターを響かせ、大切な宝物・音楽を愛おしい友と分け合えるうれしさをわたしたち観客に教えてくれました。
そして、金森幸介。この人のことも全く知らないまま気遊さんでのライブではじめて聴き、驚きともにアッという間に彼の歌に引き込まれました。自問するような珠玉の言葉は「約束の地」へとおもむく青春の道しるべのようにわたしの心に残っています。
渋谷毅はすっと現れピアノの前に座ると唐突に演奏が始まるのですが、演奏中まったく微動だもしないのにジャズ・ブルーズのグルーブ感にあふれ、骨太なのにしなやかなピアノを聴かせてくれました。小川美潮と金子マリは、渋谷さんのピアノで歌える幸運と信頼感から立ちのぼる音楽を聴かせてくれました。
アンコールは渋谷毅、小川美潮、金子マリに加えて有山じゅんじ、光玄、金森幸介、大塚まさじが登場し、金森幸介の「もう引き返せない」を歌いました。ここでも有山じゅんじが先導し、繰り返しのパートを全員が少し戸惑いながら、この日の長いライブの最後をこんな素敵な場を用意してくれた「気遊」のオーナー・井上さんご夫婦にささげるように歌い、聴いているわたしも涙ぐんでしまいました。
最後にあいさつされた気遊のオーナー・井上隆史さんが話されたように、わたしも人生の最後のステージをいっしょうけんめい生きようと思いました。
勇気をいっぱい頂いた、素晴らしいコンサートでした。

♪夢は色あせていく僕は年老いていく でもまだへこたれちゃいない
夕陽を追いかけていく 奴の歌が聞こえる
もう引き返せない (金森幸介「もう引き返せない」)

もう引き返せない 金森幸介 with 有山じゅんじ

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