カレンダー「やさしいちきゅうものがたり」

クリスマスソングが街にあふれ
あわただしいときが走り抜けたら、もうお正月
かなしかったこともうれしかったことも
せつなかったこともおかしかったことも
さびしいわかれもたのしい出会いも
ささいなできごともおおきな紛争も
まるで一年のはじめからわかっていたように
思い出という心カレンダーにきざまれる

1月1日から12月31日まで
時にはただの数字の並びが
知らない国の言葉に思えることがある
遠い遠いどこかの部屋で、同じ星を見ているあなた
ガラスのむこうの冷たさが頬をぬらし
必死で声を出そうとしているあなたの
冬の心はまだ詩にもならず歌にならず凍てついたまま
ベッドの横の壁には
いつかのアイドルの古びたピンナップと
方を並べるように寄り添うカレンダー
あなたの記憶のぼんやりとした岸辺で
世界の悲しい一年がさよならしている
そして、ぼくはといえば
どこにいるのかもわからないあなたの
窓から飛んできた手紙に手が凍る
桜の落ち葉が赤く燃えても寒い
寒い星座が夜を運んでいく
元気を出して、さあ
と新しいカレンダーをめくる
1月1日から12月31日まで
時にただの数字の並びが
不思議な物語に思えることがある
遠い遠いどこかの駅の、ホームに立っているあなた
そして世界の希望の一年がやってくる

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