長野たかし&森川あやこ・フォークデュオ

3月20日夜、川西市役所近くの喫茶店「KIRK‘S」で長野たかしさん、森川あやこさんのライブがありました。
長野さんは今年、古希を迎えるということで年初に70回のライブを敢行すべくライブをつづけてきたさ中に新型コロナウィルス感染が蔓延し続け、各地で予定されていたライブが中止になる事態に直面しています。
コロナウィルスという「もうひとつのテロ」による疑似戒厳令に近い状況で、それにあらがうことで降りかかるかもしれない火の粉を承知で、歌を必要とする人々の望む場所に出向き、望まれる歌を歌い続ける二人の心意気に、不遜ながらも敬意とエールを送りたいという思いもあり、妻と2人で参加しました。
現地に行くと、実は「KIRK‘S」が21日をもって閉店されることから、急遽このライブが企画されたとのことでした。このお店が何年されていたのか聞く機会を逃してしまいましたが、少なからずの川西市民の憩いの場として愛され、マスターご夫婦への長年のごくろうさんと感謝を長野さん、森川さんの歌にたくしたライブだと知りました。
店内は20人ほどのお客さんで、満席状態でした。
小さなお店などの場合、長野さんは費用をかけないですむように自前の音響装置を持ち込み自分で音合わせをされることも多く、この日も汗びっしょりになりながら音合わせをされていました。ライブが始まる前に、お店の素敵なマスターご夫婦とお客さんと長野さん、森川さんの心はすでにひとつになっていて、ビジネスライクな場にはない暖かくしみじみとした空気が流れていました。
こうして、ライブが始まりました。長野さんの最近の旺盛な歌づくりは世の中の動きが良くない方向へと雪崩をうつように流れ、取り返しのつかない暗闇へと進んでいくことへの憤りと伴走するようです。それは歌うことで異議申し立てをした1960年代の若者たちが既成の音楽表現そのものへの異議申し立てと伴走したフォークソングの黎明期に立ち戻ることでもあるのでしょう。
歌がどんな武器よりもどんな演説よりもひとの心を動かす力があるとしたら、それはひとの心の中に用意された最後の扉を静かに開けることができるのだと思います。その扉を開けると、なにげない日常の風景が特別の願いや夢、希望にあふれた見果てぬ風景、人間が一生かかってたどりつこうとする「約束の地」に塗り替えられていくのでした。そして歌はまた、いつの時代も歴史の教科書には記述されない「もうひとつの歴史」と「愛のものがたり」を語るひとたちによって歌い継がれてきたのだと思います。
「灰色の街」、「私が歌う理由(わけ)」など、長野さんの音楽の長い軌跡がたどった「いま」がぎっしりつまった歌たちは同時代を生きたわたしの心の奥に眠る心の軋みや青い時代の声なき声を呼び覚まし、わたしは心落ち着いて聴けなくなってしまいました。
その中でも、わたしはフォスター作曲の「Hard Times Com Again No More」に、思わずこみ上げるものがありました。ボブ・ディランなど数多くの人に歌い継がれているこの曲ですが、長野さんは東日本大震災の被災地に立った時、「こんなつらいことは二度と来るな」と自ら日本語に訳し、この歌を歌うことになったそうです。

喜びに抱かれ、涙を拾い
悲しみわかちあおう
そこにはいつも流れる歌
OH' Hard Times Com Again No More

波間にただよう小舟のように
つらいことがつづいても
きっといつかは祈りは届く
OH' Hard Times Com Again No More
(スティーブン・コリンズ・フォスター・作詞作曲 長野たかし・訳詞 )

1854年につくられ、南北戦争をはじめ長い時とたくさんの人びとの大きなかなしみを通り過ぎたこの歌は今、長野さんの素晴らしい歌詞を与えられ、困難な時代を共に生きるわたしたちの祈りの歌になったのでした。

「Hard Times Come Again No More」長野たかし&森川あやこ

長野たかし&森川あやこ・フォークデュオ” に対して1件のコメントがあります。

  1. 黒豆ちゃ より:

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    急なお願いになったにもかかわらず、引き受けて頂きました😊本当にありがとうございました🙇来てくださった方も心にいろいろなことを刻んで満足して帰ってくださいました‼️一番嬉しかったのは、マスターご夫婦😊大喜びでした😊第3の人生のスタートを応援できたのではないかと嬉しく思っています‼️本当にありがとうございました🙇

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