政治が排除してきたひとびとの言葉を政治の言葉にできるひと 大椿ゆう子さん

1965年の夏のある日、わたしは高校卒業してまだ日が浅いというのに友人2人といっしょにそれぞれ勤めていた会社をやめました。ほんとうに無責任の極みで、今はただ申し訳なかったと後悔していますが、その時は青春の生意気さから自分らしい生き方を始めようとドロップアウトを決意し、実は不安を抱えながら待ち合わせの中之島公園に行きました。
公園のトイレに入ると、定番の落書きにまじり、「ビートルズ フォー エバー」と書かれた赤い文字と「日帝打倒!人民勝利!」と書かれた黒く太い文字がにじんで見えました。
同時代の多くの若者が世の中を変えようとしていた一方で、ビートルズに熱中する若者たちもまた、無限の自由を手に入れようと世の中にあらがっていました。
あの時、政治的な変革に絶望していた若者たち(わたしもそのひとりでした)にこそ、ほんとうは政治的な救済が必要だったのだと気づいたのはずいぶん後のことで、ほんの偶然にひとりの脳性まひの青年と出会った時でした。
大椿ゆう子さんに初めて会った時、わたしはあの時の中之島公園のトイレの2つの落書きとその青年を思い出しました。政治的な極みと言える国政選挙に立ち向かう彼女の後ろに、これまで政治が救済どころか排除してきた無数のひとびとの無念と願いがぎっしり詰まっていて、わたしはそのオーラに圧倒されました。
権力と野心が渦巻く政治に届けられることのなかった彼女彼らの言葉を政治の言葉に翻訳できる稀有のひと、大椿ゆう子さんはわたしたちの勇気そのものなのだと思います。

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