再録 「永六輔さん・小室等さんと話そう会 IN 長町」 2011.08.27

「永六輔さん・小室等さんと話そう会 IN 長町」
2011.08.27 Sat

ライブは永六輔さんのトークから始まりました。永さんはパーキンソン病になられてからも、それを受け入れながらリハビリをするプロセスをラジオやトークイベントで話してこられました。永さんのお話は悲しい出来事でもおかしさがあふれていたり、理不尽なことへの怒りがかくれていて、その語りにたくさんの人々が笑い、泣き、勇気付けられてきました。
この日も交通事故にあった時のお話やリハビリの話などを永さんが語り始めると、身を乗り出すようにお客さんが聞き入り、大笑いされていました。手話通訳のひとを本来の役割をこえた共演者として話され、手話を通じてコミュニケーションの楽しさも伝わってきました。
永さんはこの日の打ち合わせで、日が落ち始めたころから小室さんの歌がはじまるように気配りをされていたのですが、そのとおりの演出であたりが暗くなり始め、照明の光がやわらかく仮設の舞台を包みかけた頃、永さんに呼ばれて小室さんが登場しました。

けれども どこかで
おまえは待っていてくれる
きっと おまえは
風の中で待っている
「だれかが風の中で」 作詞:和田夏十 作曲:小室等

「この歌はテレビドラマ『木枯らし紋次郎』のテーマソングで、作詞は市川昆監督の妻で脚本家の和田夏十さんでした。ずいぶん前の歌ですが3.11以後、この歌詞の意味をかみしめています」。最初に歌った後、小室さんはしみじみと語られました。
2003年NHK金曜ドラマ「蝉しぐれ」のテーマソングだった「遥かな愛」、「黄昏のビギン」、そして永さんが作詞し、三波春夫の最後の歌となった「明日咲くつぼみに」を歌った後、「三波春夫さんは声を張り上げてきたので、そうじゃないように歌ってほしいと、お手本として小室君のCDを渡したんだよ」と永さんがこの歌のエピソードを話されると、みんな爆笑してしまいました。
「上を向いて歩こう」と坂本九との思い出を永さんが語り、お客さんも一緒になって歌ったりしながら、楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。
途中から、やはり雨が降ってきました。用意してあったビニールカッパをお客さんに配りました。お客さんは誰ひとり去らず、みんな「ありがとう」とカッパを着ました。
その風景を後ろから見ていると、涙が出てきました。この仮設住宅に入られている方々は大方が津波で被災された方々で、ここに来られるまでにご家族、お友達をなくされた方もたくさんおられることでしょう。
実際、後ろで立ってご覧になっている方に座席にご案内しようとすると、「あと少しで行かないといけないので。でも永さんのラジオは何十年も聞いていて、さっき握手してくださって感激です」と言われた後、津波が来た時、非難している後ろから津波が追いかけてきて、もう一分遅かったら命がなかったこと、友達が10人もなくなったことを話してくださいました。
あらためて、永さんと永さんのラジオ番組のリスナーが、固い絆で結ばれていることと、今回の震災がより強い絆をつくったことを知らされました。
永さんのお話と小室さんの歌が、それをほんとうに待ち望み、必要とするひとたちに届けられたのでした。そして、その稀有の瞬間に立ち会うことができたことを、永さん、小室さん、そしてお客さんに感謝します。
ライブの後、ゆめ風基金のスタッフが永さんにお礼を言うと、「ぼくたちの方がゆめ風基金の活動に助けてもらっているのだよ」と言われたと聞き、その言葉に感謝しながら勇気をいただきました。
現地での支援活動を毎日粘り強く続けている被災地障がい者センターに敬意を表しつつ、わたしたちは現地の活動を全面的にバックアップし、全国のみなさんに彼女、彼たちの奮闘と、永六輔さん、小室等さんの期待に応えるべく、日々の活動を続けていこうと思います。
最後に、永六輔さんと小室等さん、ほんとうにありがとうございました。

翌朝、被災地障害者センターみやぎのすぐそばの喫茶店で、このイベントのことを一生懸命話されているグループがおられました。
「市民会館や立派なホールよりも、仮設住宅であったあの催しの方が何倍もよかった。感動した。最初に挨拶した車いすの女性のあいさつも、すごくよかった」と、この催しのチラシを大切そうにクリアファイルに挟み、話されている声を聞き、ほんとうにうれしく思いました。

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