震災1年

東日本大震災から1年になりました。
被災されたみなさん、心よりお見舞い申し上げます。そして…、亡くなられたみなさんのご冥福をお祈り申し上げます。

震災1年ということで、テレビでは特別番組が組まれる中、歌の力、音楽の力で被災者をはげまそうと長時間の音楽番組も放送されています。わたしは正直なところ、「被災地のひとびとをなぐさめる」という構図にどこか違和感を感じるところもあるのですが、これらの番組が「みんなで励まし合って、この危機を乗り越えよう」という純粋な気持ちから放送されていて、人気歌手やグループの歌で被災地のひとびとの心がいやされるのであるなら、それでいいのかなと思ったりします。
明治維新以来「成長し、拡大すること」が豊かになることと信じてきたわたしたちの社会の底辺に隠れていたさまざまな問題があの大震災によって明らかになった今、それらに立ち向かわなければならないのは他ならぬこの時代を生きるわたしたちしかないことを、あらためて強く思います。
昨年の11月、被災地で障害者救援活動をすすめる障害当事者を大阪に招き、シンポジウムを開催しました。その中の福島県南相馬市のパネラーの証言を紹介します。

私のとこは南相馬市です。原発から25キロの所から来ました。家は津波が来て地震が来て原発30キロの中に入ったところです。津波って「来たら逃げてください」というのはパワーが全然違います。津波の後、海岸の2キロ圏内はコンクリートの建物はありません。木造はもちろんありません。津波というのはローリングしてくるんです。ローリングした中にコンクリートや瓦礫などが一緒にまざってくるんです。その中に巻き込まれたら人の形もなくなっちゃうんです。
行方不明の数が、岩手県、宮城県、福島県で出てますけれど、遺体はないわけじゃないんです。ただ、誰の者だかわからないという事で、「行方不明」という形になんです。ですから2k圏内にいたらまず助からない、だから逃げなきゃいけないんです。
では、原発はどういう風になったかというと、20キロ圏内は屋内に居ても、危ないから全員逃げてくださいという事で強制退避です。20キロから30キロ、うちの所は屋内退避です。屋内退避がどういうに言われたか、「いま空から放射能がさんさんと降っています。屋内にいれば当座のところ大丈夫です。だから外に出ないで家の中に居てください」。
どういう風な形で屋内に居るのかと言ったら、「換気扇は閉めてください」「エアコン切ってください」「窓閉めてください」「隙間の所は全部目張りしてください」。「家の中にマスクをしてじっとしていてください」。そういう風に言われるのが屋内退避です。
その中でずっと居れるのかという事です。居られないですよ、怖くて。だから皆さん逃げます。逃げるんですけども、現実的に全員逃げられるのかって言ったら、逃げられないです。
逃げられられないのは誰か、結果的には高齢の人です。それから、高齢の人を抱えた世帯です。その人たちは年寄りをおいて逃げられないです。だから残ります。
それから同じように障害者の世帯です。障害者の世帯も、避難所じゃない、30キロから外に逃げないといけないわけです。だから車とかで移動しなきゃいけないですね。もう逃げられないんです、やっぱり。だから残るんです。障害者の世帯も残ります。
それからもうひとつ、残るのは誰か、避難所の人たちです。避難所に行っている人たちです。避難所に行っている人たちは家が流されている人たちです。その人たちも避難の対象になるわけです。でも逃げないです。それはなぜか。屋内退避になった時点で自衛隊も警察も捜索が中止になります。だから自分の身内もまだ見つかっていません。「自分の身内が見つかっていないのに自分たちだけ逃げられるか」って、逃げないです。自分の身内たちが見つかるまでは自分たちも逃げないって残るんです。
南相馬市では7万の人口のうち1万人が最終的に残ったと言われます。1万人の残った人たちが、じゃ安全に残れたのか?そうじゃないです。30キロの枠がくくられる事によって、30キロの所に警察の検問が全部出来ます。
そうすると外から何も入って来なくなるんです。地元の人しか中に入れないんです。地元の人たちしか入れないということは、物資が入って来なくなるんです。病院も全部閉まります。それから福祉サービスも全部閉まります。中に居る人たちは枯渇するんです。
薬もない、食料もない、燃料もない、そういう所でどうやって生きていくんだ、でも生きざるを得ないんです。逃げないんじゃなくて、逃げられないんです。そういうのが原発の事故の現状なんですね。
皆さんの所にも全国に原発があります。30キロ圏内じゃないんですよ。今回、実際原発の放射能がどこまで飛んでいるか、お茶の静岡まで飛んでいます。300キロですよ。稲わらで牛に影響があったのが60キロで、そこまで飛んでいます。全国の皆さんのところにも入ります。30キロもっと危険です。
でも逃げられない人たちがいるということを是非わかって欲しいです。そう思います。

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