中村哲さんの遺言とほほえむファシズム

新しい年が始まりました。
あけましておめでとうございます。
昨年の12月4日、中村哲さんが銃撃され、亡くなられたニュースに驚きと悲しみに打ちひしがれた方々がたくさんおられると思います。私もそのひとりです。
1984年、医師としてパキスタンのペシャワールに赴任し、以後アフガニスタンで医療支援活動を続けていた中村哲さんは、病気の背景には食料不足と栄養失調があると考え、「100の診療所より、1本の用水路を」と、2003年よりアフガン東部で用水路の建設を始めます。ガンベリ砂漠を潤す総延長25・5キロに及ぶマルワリード用水路を整備。砂漠は1万6500ヘクタールの緑の大地に生まれ変わり、稲穂、麦が育ち、65万人が帰農しました。住民のよりどころであるイスラム寺院や学校も建設されました。
「戦争している暇はない」、「われわれは武器ではなく、鍬で平和を実現しよう」…、中村哲さんの活動から生まれた言葉は、世界中の平和を願うすべてのひとへの熱く強烈な遺言として、いつまでもわたしたちの心を励ましてくれることでしょう。
それにしてもバラエティー化してしまったテレビのニュース番組は、中村哲さんの死もM1グランプリも沢尻エリカさんの覚せい剤事件も「桜を見る会」もカジノ贈収賄事件もオリンピックも、日替わりメニューのようなご隠居談義とともに現れては消えていくだけの二時間ドラマの再放送のようです。
そして、知らず知らずのうちに同じように笑い、怒り、悲しみ、嘆き、「テレビの中の現実」、「スマホの中の実話」というフィクションに翻弄されて一年が始まり終わる「笑えない喜劇」が延々と続いていると感じるのはわたしだけでしょうか。
ほほえむファシズムは、すでにファッションとしてわたしたちの日常をコントロールしていて、思わずぞくっと寒気を感じます。

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