村人参加の民主主義をめざして 難波希美子さんとチラシまき

 難波希美子さんが能勢町町議会議員になって約2年半、その間1か月に一度、「なんばきみこ便り」を発行し、能勢町内の新聞折込と別に手配りを続けてきました。
 「便り」は能勢町の施策とそれを議論する議会の報告だけでなく、気候危機や反原発などをはじめ彼女が議員になる前から続けてきた活動、農林業をになう人々や安全でおいしい食べ物を提供するお店や産直運動など地域住民から学ぶ暮らしの知恵から、胸を張り裂けられる世界各地の現実などその時々の出来事や彼女の想いを綴ったものです。A4のざら半紙の大きさでひとつひとつの記事はとても短いものですが、休むことなく毎月一度届けてきました。
 同時に開店したフリーマーケット兼事務所は週2日、月曜日と火曜日のオープンを原則に、議員活動と重なる時はお休みになっていて、実は「便り」で最も読まれているのがお店の開店日と議員活動のカレンダーという、一風変わった通信になっています。
 お店はかなり高価なものでも捨ててしまうのはもったいないと品物を寄附されるひとの願いと、どんなものでも100円で掘り出しものを探しに来られるひとの想いがつながり、重なり合う交差点の役割を担いながら、少しでもゴミになってしまうものを減らす役割もあります。
 街とちがい、農家が多いのでポストさがしも大変で、またマンションもほとんどなく、チラシをまく時間より田畑のまわりを歩いている時間が多いのですが、それでも不思議なものでいつのまにかそれにもなれました。それどころか、マンションがほとんどの新大阪や淡路でチラシまきをしていた時よりもまわりの景色の移り変わりを楽しめるだけでなく、入れないでほしいと言われるところがほとんどなく、家の数は少ないけれど快適にチラシまきができます。
 わたしはなるべく家の人と顔を合わせなくてもいいように平日の昼にしているのですが、それでもご在宅で顔を合わせることがあり、ほとんどが迷惑と思われても仕方がないのに、「いつも楽しみにしているよ」とか「ファイルにしてためている」と言ってくださる方、時には一時間も話をされて、能勢の町がどのように苦難の時をしのいできたかなどを教えてくださる方など、とてもやさしい方々と出会います。
 それが、もし2期目の選挙に難波さんが出た場合に助けてくださるかはどうでもよく、能勢に誇りをもったひとびとの話を聞けるというのもチラシまきの楽しみのひとつでもあります。
 ほんとうは「政治」はチラシをまくあぜ道の向こうにあるはずのこの地の記憶と記録がぎっしり詰まって点在する郵便ポストの中から始まるのだと実感します。
 実際、能勢に来て12年、つくづく思うのは世界的な規模で押し寄せる気候危機を自分の事としてとらえ、目先の収穫が目減りしても自然環境を壊さず、身体に安全な農作物を作り続ける農家の方々と、その想いと行動を支える能勢の方々の心意気にリスペクトする一方、それはまた、能勢の人々が愛し受け継いできた淨瑠璃文化にもあふれている「助け合い」と「村人参加のみんなの民主主義」が息づいているあかしだと思います。
 難波希美子さんがかたくなにプラスチックを使わず、暑くても寒くてもエアコンを使わない暮らしをしていることに、年寄りの私には体の危険を感じて耐えきれないところもあるのですが、そのひたむきさは能勢をこよなく愛する心がさせていて、能勢の人々の懐深い優しさに支えられているのだと思います。