神戸国際ホールの島津亜矢

1月28日、島津亜矢の神戸国際ホールでのコンサートに行きました。今年はじめてのコンサートでしたが、年末に延期になった梅田芸術劇場のリサイタルからちょうど一カ月で、素晴らしかったリサイタルの模様が心に焼き付いていましたので、心うきうきで会場に行きました。
わたしの娘の夫で障害者のKさんの車に乗せてもらい、豊能障害者労働センターのスタッフのIさんと3人で箕面を出発しました。予定より出発が遅くなったのですが、高速道路を走ると思ったより早く4時には会場に着き、待ち合わせをしていた加納ひろみさんと合流しました。
KさんとIさんとわたしは昨年の冬、八尾の島津亜矢コンサートに行った組み合わせで、彼らは一年ぶりの島津亜矢になります。
また加納ひろみさんはわたしの古い友人でもあるのですが、シンガーソングライターで自作の歌もたくさんあり、またカバー曲も数多く歌っているひとです。昨年の秋に、「島津亜矢が神戸に来るけど、行かない?」と半ば冗談で言ったところ、「行きましょう」と言ってくれたのですが、彼女を知るわたしの友人たちが「えっ、加納さんが島津亜矢のコンサートに行くの?」とびっくりしていて、わたしとしても今回はかなりのミスマッチかなと思いつつ、この日がやってきたのでした。
開場前なのにすでにたくさんのお客さんが来られていて、係のひとが入場整理をされていました。わたしたちは座席指定なので列がなくなってから入ろうと思い、ゆっくりしていたところ、男の人が話しかけて下さり、いろいろ話をしていると、「もしかすると恋する経済のひととちがう?」と言われてびっくりしました。「そうですが、どうしてわかったんですか?」と訪ねると、「障害者と一緒に来ると書いてあった」と言われました。「恋する経済」とはこのブログのことで、読んでくださっていることに感謝でした。島津亜矢の関連はすべてチェックしているそうで、ユーチューブも消されない前にすべてダウンロードしていて、コンピューターのハードディスクの容量がいっぱいになってしまったそうです。
岡山でタクシー運転手をされているそうで、実は昨年の11月の梅田芸術劇場に行く予定でホテルも予約していたそうですが延期になってしまい、年末の忙しい時に休むことができず、今回は久しぶりのコンサートだとおっしゃっていました。わたしたちが観た夜の部でも満席で2020人、昼の部も満席で合計4000人以上のお客さんが来られたようです。この方や、もっと遠方から来られるファンの方々がたくさんいらっしゃって、それに各地の島津亜矢ファンがかけつけて、昼夜2回公演のコンサートが実現していることを実感しました。

わたしたちIさんと加納ひろみさんとわたしは一階の12列目の左端で、Kさんは車いす席でした。「海ぶし」から第一部が始まり、一階席の比較的前の方でしたので、島津亜矢の表情もはっきりとわかりましたが、リサイタルの時とまたちがった表情でとても可愛らしく感じました。
わたしは「海ぶし」や「演歌桜」、「海鳴りの歌」の時の彼女のしぐさがとても好きなんですが、「海ぶし」の前奏や間奏の時には、握りこぶしをつくりながら左腕を振り回し、歌に魂を込めるようなしぐさがとても可愛らしく、そのしぐさだけでもう彼女の歌の世界に吸い寄せられるのです。
阿久悠の歌からは「一本釣り」、「明日があるなら」、「麗人抄」とつづきました。この3曲はそれぞれまったくちがうタイプの歌ですが、歌い込むごとにより細やかに、そしてより豊かな表現でそれぞれの女性を歌う島津亜矢は、今更ながら天才である前に大変な努力家なんだと思いました。
とくに「麗人抄」は、CDで聴いているのとはかなりちがった感じで、より劇的でより切なくてよりハートブレイクな歌にどんどん進化していくので、次回はこの歌がどうなっているのかと聴く方の期待もどんどん膨らんでいきます。この歌は印象的なギターの演奏とあいまって、島津亜矢が長い間歌い続ける歌になるのではないかと思います。
「帰らんちゃよか」、「母への感謝状」と、いつ聴いても聴きほれる名曲を歌った後、白いドレス姿で東日本大震災の鎮魂歌として「千の風になって」を歌い、すぐさま真っ赤なミニドレスで登場し、マルモリで観客参加で盛り上げた後、「アンチェインド・メロディー」を見事に歌い、一部は終わりました。(曲順など記憶違いがあればごめんなさい。)
第二部は名作歌謡劇場「お玉」、「海鳴りの歌」の後、客席におりて握手まわり。これにはほんとうに頭が下がります。今回はわたしの席は通路のそばで、その通路を通ればはじめての握手になるかと心落ち着かず、曲名もあまりおぼえていませんが、残念と言うか楽しみが延びたというか、すぐそばの通路で横にずれてしまい、彼女は行ってしまいました。ちなみに車いす席にいたKさんは八尾に次いで握手されていました。
それはさておき、いつものことですが会場を走り回り、握手をしながら、時々ひっぱられたりしながらも歌がぶれない島津亜矢も立派ですが、彼女をガードするため、時には立ち膝になったりして走り回るマネージャーさんに感動しました。
第二部では「恋慕海峡」の後で、わたしが大好きな「想い出よ、ありがとう」を歌ってくれたことと、「俵星玄蕃」がわたしの好きな歌い方で熱唱してくれたのがうれしかったです。この歌に関しては何回か書いていますが、どの歌い方も島津亜矢でしか歌えないすばらしい歌と思っているのですが、「蕎麦屋か」というくだりがあまり元気よくない方が好みで、めったに聴けない「蕎麦屋か」を聴いてぐっと来てしまいました。
そして最後、舞台の左右であいさつし、中央に戻って両手を広げた後、マイクを抱いて膝まづく、その姿に今回も思わず涙が出てしまいました。むかし、「かぶきもの」といわれたり「河原乞食」といわれたあらゆる大衆芸能のルーツを感じさせる彼女のひたむきな姿勢、観客と一緒に歌の世界をつくり上げる歌手の原点を見失わない真摯な姿勢に心がゆさぶられるこの一瞬が大好きです。ほんとうに、島津亜矢のファンになってよかったと思う一瞬でした。
一年ぶりにつきあってくれたKさんもIさんもよかったみたいですし、なによりも初体験の加納ひろみさんがずいぶん喜んでくれたのがうれしかったです。加納さんには今度、島津亜矢の「Singer」を貸すことになりました。

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