友部さんの旅はまだ終わっていない。そして、わたしの旅もまた…。

4月4日、大阪心斎橋のライブハウス「JUNUS」で友部正人さんのライブがあり、友人3人で行きました。5月14日に能勢で開くコンサートを開く挨拶も兼ねていたのですが、最近は毎年5月の「春一番コンサート」の時の30分程度のライブしか聴いていなくて、ファンとは言えない後ろめたさを抱えて会場に行きました。
開演時間になると友部さんは静かに登場し、昨年発表された「ブルックリンからの帰り道」の最初に収録されている「マオリの女」から歌い始めました。
若い時からずっと変わらない弾き語りのスタイルと、そのだみ声で舌っ足らずの歌声は年を重ねたわたしの心に瑞々しい感覚をよみがえらせ、ああ、友部さんの旅はまだ終わっていないのだと思いました。そして、わたしの旅もまた…。
つい最近の歌と「一本道」や「こわれかけた一日」などの名曲を次々と歌い、ほとんどMCはなく、歌い終えた後に「ありがとう」と静かに話す友部さんの姿に、なぜか涙が出てきました。その涙は昔をふりかえる涙でもなく、また歌の内容から流れる涙でもなく、ただ友部正人という一人の男が少年のような柔らかい心と孤独な夜を持ち続け、半世紀も歌いつづけていることのいとおしさが胸に迫ってきたのでした。
1970年代、政治の季節が通り過ぎた後の無力感は政治活動とまったく無縁な町工場で働いていたわたしの心までも覆いつくしていました。
そんな時、関西のフォークシーンのようなメッセージソングでもなく、また最近のJポップへとつながる個人の感情をストレートに歌う歌でもなく、時代の闇を色濃く隠している日常の心象風景を淡々と歌う友部さんの歌は、70年以後の人生を生き続けなければならなかったわたしの伴走歌でした。
「それでも人生はつづく」、その長い時間を彩る大長編映画がまだ終わっていないのだとしたら、友部さんの歌は「お前はどんな人生を生き、どんな人生を生き続けるのか」と歌いつづけるテーマソングなのだと思いました。
会場には50人を越える人たちがいました。若い世代もたくさんいて、友部正人さんの歌がどの世代にも受け入れられる「青春」の歌なのだと実感しました。
くわしいことはまた次の機会とさせていただきます。

友部正人×森山直太朗「こわれてしまった一日」

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