山本太郎とわたしたちのたたかいはいま始まったばかり 2019年参議院選挙

こんなにわくわくする選挙が今まであったでしょうか。失礼ながら、「選挙をする側」で活動する人たちは別にして、一般の有権者であるわたしがどきどきするのは、今回が初めてです。今までわたし自身も何度か選挙にかかわったことがありましたが、選挙をする側にとっては非日常ですが有権者はどちらと言えば白けていて、幾分暗い表情で街頭演説の前を足早に通り過ぎていくのが常でした。わたしもまた、そのうちのひとりでした。
そんな選挙風景を一瞬にしてかき消してしまったのが山本太郎と「れいわ新選組」でした。
六年前に参議院の東京選挙区から立候補して当選した山本太郎は、国会の中でそのしゃべり口も行動も、いわゆる「議員先生」らしさがまったくなく、「議員先生」の方々からは失笑されていたのが現実ではないでしょうか。しかしながら国会中継やSNSでは圧倒的な支持を得ていることもまた確かな真実です。それは、彼がわたしたちと同じ日常の言葉で怒り、憂い、語っているからだと思います。
そんな山本太郎が2期目としてかなりの確率で国会にもどれるはずの従来の選挙戦略を捨てて、「れいわ新選組」という名のグループをつくり、まったく新しい選挙活動・政治活動をはじめました。唐突とも思えたその時から山本太郎はわたしたちに大きな合図を送っていたのだと、後から気づきました。
安倍一強のもとで疲弊の極みとなった「政治」に辟易し、「この国はすでに壊れている、このままでいいのですか?もういいかげん、我慢しないで。今怒らないでいつ怒るの」と、彼は他ならぬ有権者のわたしたちに鋭い問いを突き付けたのでした。
そして、まずは寄付金と言う形でわたしたちが意志を表明することを求め、次に壊れているとも言えるこの国でいつも自己責任という暴力にさらされる人びと、もっとも生きづらく、困難な暮らしを強いられる多様な問題の「当事者」と言われる人たち10人の候補者を擁立しました。重度身体障害者、性的少数者、派遣労働者、コンビニ加盟店ユニオンの労働運動家、公明党の方針に異を唱える創価学会員など、社会的弱者といわれる人びとを中心に集結した10人の候補者は「当事者」の問題を訴えるだけではありません。当事者としてさまざまな苦難を通り過ぎた果てに、自分だけの特殊な問題と思ってきたことが、実はこの国の人びとのだれもが抱えている問題であり、だれもが抱く「幸せになりたい」と願う心と深くつながっていることを実感している10人なのです。
舩後靖彦さん・元日本ALS協会千葉県支部運営委員 介護サービス事業会社副社長
木村英子さん・全国公的介護保障要求者組合書記長
山本太郎さん・参議院議員、れいわ新選組代表
蓮池透さん・北朝鮮による拉致被害者家族連絡会元副代表
安冨歩さん・東京大学東洋文化研究所教授
三井義文さん・コンビニ加盟店ユニオン元執行副委員長
辻村ちひろさん・環境保護NGO職員
大西つねきさん・IT企業社長、元JPモルガン銀行員
渡辺てる子さん・元派遣労働者、レイバーネット日本運営員
野原ヨシマサさん・創価学会員
あなた方の問題提起は、わたしたちの社会の未来を希望で描く縮図なのだと思います。
しかも、山本太郎はその中でも重度障害者の舩後靖彦さん、木村英子さんの2人を、最優先して当選者にする比例区特定枠に指定しました。その結果、山本太郎は300万票取らなければ落選になります。
今年から設けられたこの制度は、島根県と鳥取県、徳島県と高知県が合区となったために、それぞれの比例区で2人あふれてしまうことを助けるために自民党が姑息にも要求してできたものらしいです。山本太郎は自民党の意図とは正反対に、自らが落選してもこの2人を参議院に送り込みたいと自らの退路を断ち、排水の陣でこの選挙に臨んでいることがわかります。こんな政治家、今までいたでしょうか。
そして、特定枠ではない残りの8人もまた、山本太郎に負けない強い志を持って自分の選挙をたたかうことが同時にまず2人の障害者を参議院に送り込むことになるという、対等で潔くわかりやすい選挙運動を繰り広げています。
政治や選挙がいつのまにか専門家の道具と化してしまった今、民主主義を取り戻すのはわたしたちひとりひとりであることを痛烈に感じさせる「れいわ新選組」は、劇場化した政治の舞台からも観客からもロビーからもあふれ出て、わたしたちの日常のど真ん中でわたしたちの怒りと愛と夢と希望を共に語り、共に未来をつくろうと呼びかけるのでした。
ここでも、山本太郎の本気、覚悟は、それを受けと止めるわたしたち有権者の本気、覚悟を求めているのだと強く感じます。
消費税の廃止、奨学金徳政令、最低賃金全国一律1500円、公務員の増員など、自民党政治や規制の経済学者や大企業などからは財源を考えないポピュリズム、無責任な人気取りだと非難されますが、一部の人にだけ恩恵がつぎ込まれ、それを政治経済の常識とする牢獄からの解放が空想ではなく、わたしたちの選択にかかっていることを教えてくれました。大企業の法人税や高額所得者の所得税を優遇するお金が、消費税で賄われているという話は説得力がありますし、高等教育の授業料もさることながら、奨学金という借金をしなければ大学で学べないという現実をすべてチャラにするという一見乱暴な主張も現実的な政策として実現できることだと思います。
アベノミクスで経済を立て直したと豪語しても、毎年自殺するひとが2万人を越えるこの社会が「豊かである」はずはなく、「死なないでくれ、生きてくれ」と叫ぶ山本太郎と、どちらが正しくて真の政治家なのか、はっきりしていると思うのです。
3日後に投票日を迎え、街頭やSNSや草の根民主主義の盛り上がりだけでハードな組織力を持たない「れいわ新選組」が躍進するというのは難しいことかもしれません。しかしながら少なくとも比例で舩後靖彦さんの当選は確実と言われる中、木村英子さんも参議院に送り込めたらすごいことだと思います。もちろん、それ以上に山本太郎をはじめ次々と当選する夢は見つづけたいものです…。
山本太郎と仲間たちのたたかいはいま始まったばかり、そしてわたしたちのたたかいもまたはじまったばかり、この勇者たちは著しく傷つけられた「多数決」という名の数の暴力ではなく、この社会の誰一人取り残さない、たった一粒の涙も無駄にしない政治、民主主義をとりもどすために、いま立ち上がったところなのだと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です