小さないのちたちと自然の森を再現 平田有加水彩画展

「四季の企画室 野の 福田商店」で、平田有加水彩画展「~芦生の森より~調和する森を夢みて」が開かれていて、先日の日曜日に観に行きました。

 「四季の企画室 野の 福田商店」は、能勢の自然と人の「かけがえ」を深く愛する店のオーナーさんが、おそらく先代のお店を受け継ぎ、カフェでもなく画廊でもなく、選りすぐりの食品や雑貨と本と、四季折々の飲み物を提供してくれるお店で、能勢の「うれしい」がぎゅーっと詰まった素敵なスポットです。またこのお店は、俳句教室や文章教室や手作り室など、どんな事もどんな物もどんな人も出会い、伝え、学び合う場にもなっています。
 オーナーさんが以前は雑誌の編集や公的な事業の企画をお仕事とされていたと聞きましたが、いつもあっと驚く企画をされていて、能勢の若い就農者を紹介する展示と野菜や米の即売会は能勢町内外からたくさんの人が来られた他、もんぺの展示も人気でした。
 今回の企画は、能勢の農業に大きな被害を与える鹿による獣害が、森と鹿と人の調和がくずれてしまっていることで引き起こされているというほんらいの問題に立ち返り、京都・美山の芦生の森の保全活動にも参加されている画家・平田有加さんが、鹿の食害で消えてしまった小さないのちたちと自然の森を記憶の森として丹念に再現した水彩画の展示会です。
 実際は長さ9メートル、幅1メートルの大きな絵巻物で、その2分の1のレプリカが展示されていましたが、それでもその迫力と精緻なタッチで描かれる色鮮やかに心を奪われました。
 平田有加さんは、2001年に京都・美山にある西日本有数の天然林<芦生の森>を訪れ、「忘れたくても忘れられない、桃源郷のような森」と感動されたといいます。その<芦生の森>が、2007年に再訪されときに鹿の食害等の様々な問題が重なったことで荒れてしまったことに心を痛め、消えてしまった感動の森を水彩画の中で再現する取り組みをはじめました。
 足元から頭上まで緑で覆われたかつての芦生の森は現在、記憶の中の森として平田さんの絵の中で見ることができます。「絵が、日常生活に追われている人、落ち込んでいる人の癒しと心の安らぎになるように」との思いも強くして描かれている絵です。
 瑞々しい森の風と大地の暖かさ、豊かな川の流れと共に小さないのちたちの息吹が絵の端から端まであふれ、聴こえてくる自然の愛おしくも切ない声につつまれながら、豊かな森が荒廃する問題から、森と鹿と人との共生について考えるきっかけの場となれば嬉しいと、お店のオーナーさんの静かなメッセージに心が立ち止まる、素晴らしい時間をいただきました。

平田有加さんのプロフィール:
1973年奈良県に生まれ、奈良女子大学理学部化学科卒業後、関西のアートスクールにてデッサンを学び研鑽を積む。2001年から国内外の水彩画展覧会等に出品。受賞多数。
現在、京都府に残る原生林「芦生の森」の森と水の空間をテーマとして16年になります。

所属
一般社団法人 日本美術家連盟 会員
近鉄文化サロン上本町・阿倍野 水彩画講師
アトリエKONOHA 主催・講師
デッサン・水彩画講座 (中之島、森ノ宮、橿原、新ノ口、京都) 講師

2023.4.22より | 画家・平田有加水彩画展~芦生の森より~ 「調和する森を夢みて」

facebook:「四季の企画室 野の 福田商店」