時のラブソングは終わらない

カレンダー「やさしいちきゅうものがたり」が2022年で終わるということで、松井しのぶさんにお声掛けさせていただいた縁から、豊能障害者労働センター機関紙「積木」編集部が寄稿を依頼してくれました。
先の記事と重複するところは容赦いただき、「積木」NO.305号に掲載された全文です。
豊能障害者労働センターを離職してからすでに17年の月日が経ちました。それからも何度も寄稿させていただきましたが、これが最後の寄稿文になると思います。
豊能障害者労働センターのみなさん、ほんとうにありがとうございました。


時のラブソングは終わらない!
カレンダー「やさしいちきゅうものがたり」ラストストーリー

2006年版から17年に及ぶ長い間、たくさんのひとたちに愛されてきたカレンダー「やさしいちきゅうものがたり」は2022年版が最後になりました。
ほんとうに長い間、毎年毎年の想いをこめてイラストを描き続けてくださった松井しのぶさんに、感謝の気持ちをどう伝えればいいのか言葉が見つかりません。
毎年6枚で17年間、ふりかえれば102枚ものイラストを描いてくださったことになります。その間、本来のイラストのお仕事も数多くされていたと思いますし、毎年の構想から作成・校正まで長い時間を拘束することになり、最初に声掛けさせていただいた者として大変申し訳なく思っています。
というのも、松井しのぶさんのライフワークは絵本などもう少し違った世界にあると思っていましたから、ずいぶん創作の芽を摘んでしまったのでないかと後悔しています。
しかしながら、松井しのぶさんの世界感が広く豊かであるからこそ、描き残してくださった102枚は単なるカレンダーのイラストにとどまるものではありません。
世界のいたるところから聞こえてくる子どもたちの悲鳴と理不尽に失われていくおびただしい命に心痛めながら、だれひとり傷つけない平和と自然との共生を願う松井しのぶさんのイラストは、わたしをはじめ数多くの人々に勇気を届けてくれました。

カレンダー「やさしいちきゅうものがたり」の誕生

2003年秋、初代カレンダーのイラストレーター・吉田たろうさんが急逝されました。カレンダー制作にかかわらず関西の障害者運動によりそい、ともに闘ってきた仲間でもあった吉田さんの死をすぐには受け入れられず、しばらくは途方にくれながら大きな悲しみに心が締め付けられる毎日でした。しかしながら、厳しい現実はわたしたちが立ち止まるのをゆるしてくれませんでした。わたしたちは吉田たろうさんの死を悼みながらも新しいイラストレーターを探さなければなりませんでした。一時は5万部も制作したカレンダーの収益は全国各地の障害者のかけがえのない所得となり、カレンダー制作をやめてしまうことはできなかったのです。
吉田たろうさんが並々ならぬ情熱で描き続けてくださったイラストの熱量を引き受け、しかもいままでとちがう魅力を兼ね備えたイラストレーターを探すのは至難のわざでした。
身近なコネクションから最後は毎日インターネットで、新しいカレンダーにふさわしいイラストレーターを探しつづけました。
そしてとうとうそのひと、松井しのぶさんを発見しました。彼女のイラスト作品を見た瞬間、「これだ」と思いました。このイラストと出会えた幸運に感謝しました。2003年暮れのことでした。
しかしながら、松井しのぶさんにコンタクトがとれる人はわたしたちのまわりにはおらず、見ず知らずの人間からの突然のお願いに警戒されても不思議ではありません。断られたらどうしようという不安が先立ち、お願いのメールを出すのをためらっていました。
2004年5月、わたしは決心して長いメールを送りました。今までのこと、これからのこと、ほんとうに精一杯の気持ちをこめてお願いしました。信頼される紹介者がいるわけではなく、メールを送ったもののほとんどあきらめていたのですが、なんと数日で快諾の返事をいただきました。うれしかった。
こうして、カレンダー「やさしいちきゅうものがたり」が誕生しました。

至上の愛へと わたしたちの旅はつづく

松井しのぶさんのイラストからあふれてくるこのせつなさはなんだろうと、わたしはずっと考えていました。今はそれが孤独な心、つながろうとする心の手紙なのだと思っています。真っ青な空、限りない緑、暖かい赤…、小さな一枚の絵の隅から隅まで、この世界の、空の、海の、森の、すべてのいのちのいとおしさ…。
だきしめたくなるノスタルジーの中に、小さないのちのひとつひとつがいっしょうけんめい生きる静かな意志、きずつくことをおそれずに人と人がつながり、平和な世界を分かち合い、共に生きる希望を育てる強い意志があふれでるのでした。
2006年から今までの長い年月の間に世界で起きたさまざまなできごと、そしてわたしたちそれぞれの身の上に起きた出会いや別れ…。
2022年の「やさしいちきゅうものがたり」は、イラストの外側の厳しい現実、理不尽な暴力、かなわぬ夢と遠ざかる希望、そして地球の気候変動のもとで危機に瀕している生きとし生きるものたちの悲鳴が聞こえる、愛おしくも哀しいラストストーリーになりました。
しかしながら、誰もが共に幸せに生きる至上の愛へと急ぐわたしたちのリュックサックには、松井しのぶさんが届けてくれた102枚のイラストと言葉がぎっしり詰まっています。そのやさしさとあたたかさを背中に背負い、わたしたちは旅を続けようと思うのです。

松井しのぶさん、ほんとうに長い間ありがとうございました。そして、ご苦労さまでした。

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