優しい夢と手をつなぐ 松井しのぶ カレンダー「やさしいちきゅうものがたり」

2017カレンダ-「やさしいちきゅうものがたり」1月2月

カレンダー「やさしいちきゅうものがたり」のイラストレーター・松井しのぶさんが、カレンダーを制作している豊能障害者労働センター機関紙「積木」に寄稿された一文を転載します。松井さんのイラストの裏側には青みがかった薄闇が隠れていて、それはちょうど夜がまだ気配を消さないまま、朝の光が忍び寄る寝室の窓ガラスのようです。とりわけ今年は、今までは絵画的だったイラストがまるで一本の映画のようです。こんなことを書くと松井さんに叱られるかも知れませんが、お父さんが同居されるようになり、日常の暮らしの中で時々起きる事件が「採用されなかった映画のエピソード」として貯金され、意味もなくささやかではありますが豊かな物語となって彼女の指先からあふれ出ているようなのです。沢木耕太郎のエッセイ集のタイトルではありませんが、世界は「使われなかった人生」であふれているのですね。


優しい夢と手をつなぐ     松井しのぶ

小さな身の回りで起きている些細なことから世界のことまで、世の中の空気が自分の肌までピリピリとさしてくるような、そんな様々な辛いニュースばかりついつい目がいってしまう……今日この頃。先日たまたま「グレースオブモナコ」という映画をテレビで見る機会があり何気なく見るとはなしに見ていたのですが、その映画のクライマックスでモナコ王国がフランスに封鎖されて侵略の危機にあり、もう打つ手も無くなったという国の存亡がかかった場面でグレース王妃が各国の代表を招いた赤十字の晩餐会でスピーチをするという場面で、それまでただなんとなく見ていただけだったのに、そのスピーチの内容にすごく引き込まれてしまいました。今日はその言葉を機関紙を読んでいる方々にもシェアしたくて、長いスピーチなのでその中の言葉から私が選んだ言葉を抜粋したのですが紹介しますね。※  ※  ※子供じみていますが私はおとぎ話を信じます心から望めば実現するはずですどんな努力も惜しまない覚悟があれば世界は変えられると信じています憎悪や衝突も消えるに違いありません代償を払う覚悟があれば私にとってモナコはそういう国です私は軍隊を持っていません誰の不幸も望みません

自分のできる範囲で少しでも世界を変えるために私はここにいますでも破壊する人がいれば現実もおとぎ話も終わりです気に入らないから破壊する人々がいます当然の権利とばかりに幸福や美を破壊する権利は誰にもありませんそれは許されない事だと教わりましたそんな世の中には住みたくありません愛があれば解決できるはずですなぜなら愛の力を信じているからです愛の力があれば武器や攻略や恐怖や差別はなくなり世の中が正しい道に導かれますだから今夜は愛を賛美したいのです私は愛を守り抜きます皆さんも各自の方法で努力してください自分の社会の中で※  ※  ※世間をよく知っているという人たちは「愛があれば解決できる」なんて、甘いおとぎ話の演説と一笑されるかもしれません。このスピーチはグレース王妃が実際に語った言葉ではなく全くのフィクションなのだそうです。ただこの映画の監督がこの言葉を入れたかった気持ち、今の世界にどんな気持ちが必要なのか、こんなおとぎ話のような言葉をあざ笑うような人がこの世の中に確実に増えている危機感からのような気が私はするのです。そして私もそのおとぎ話の住人です。

ピックとニックと旅をしながら、優しい世界に出会うために、そのおとぎ話の物語を紡いでいます。同じ気持ちの誰かと出会うために、違う気持ちの誰かと手をつなぐために、そして愛で語り合うために…ピックとニックがあなたの心の中で新しい優しい物語を紡いでくれることを祈りながら…。

そして思うのです、一人一人がそんな気持ちで生きて行ける世の中、そういうものを心の中に育てることができる世の中はどこからか勝手にやってくるものではありません。一人一人が、自分自身が、本気でそう思って、諦めている自分を変え、そして世界を変えてゆくしかないと感じています。マイケルジャクソンが歌っている「マンオブザミラー」の歌詞ように…(世界を変えたければ、まずは鏡の中の自分を変えようという歌詞です)だからこそたくさんの人にど〜〜〜んとハートの爆弾を落としたい、殺伐とした武器ではなく世界中を暖かい愛の心でいっぱいにしたい。そんな思いを込めて2017年もカレンダーを描きました。明日のあなたの心にしっかりとした強い思いの愛がキラキラと輝いていますようにと♡そして手を取り合って未来に歩いて行けるようにと…。

*ピックとニックはカレンダーのイラストに登場するキャラクターです。

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