カレンダー「やさしいちきゅうものがたり」

その時、ぼくはとつぜん信じた
ひとつぶの涙が
「かくめい」へとつづくことを

ゆめをみた
あなたが手をふっていた
まるで世界そのものとさよならするように
とおざかるあなたが手をふっていた
あなたのなみだはきんいろにこぼれ
ぼくのこころのいちばんやわらかいところをそめた

それはほんとうにあったこと
あなたが二十歳だったとき
ふたりぶんの孤独が部屋中にあふれ
寒い冬の空が青くぶらさがっていた
ぼくが眠るそばであなたは手をふり
なにをかんがえていたのだろう
それからずっとぼくのゆめのなかで
手をふりつづけるあなたの長い時間は
早かったのか間にあわなかったのか

ゆめをみた
何億人のあなたが手をふっていた
まるで世界そのものがさよならしているように
とおざかる何億の手がぼくのねむりをうめつくす
ながれつづける何億のなみだが
ぼくのこころのいちばんもろいドアをやぶった

どんな朝がぼくたちをまってるの?
どんな空とどんな風とどんな森と
どんな夢とどんな失敗とどんなパンと
どんな伝言板とどんな証明書とどんな映画と
どんな約束とどんな裏切りとどんなうそと……
どんなさよならがぼくたちをまってるの?

さよなら2011年
ぼくたちはつぶやく
どんなにかなしいことも
どんなにゆるされないことも
どんなに血がながれたことも
2011年のすべてはぼくたちのこと
いとおしい2011年、がんばった2011年
どれひとつ置き去りにしないで
ぼくたちの旅はつづく

カレンダー「やさしいちきゅうものがたり」
イラスト・松井しのぶ 製作・豊能障害者労働センター

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