松井しのぶさんのメッセージ

松井しのぶさんは、障害者市民事業ネットワークが販売するカレンダーのイラストを描いてくださっています。
豊能障害者労働センター機関紙「積木」編集部からの依頼により、松井さんが書かれた文章を掲載します。

※  ※  ※  ※  積み木に寄せて  ※  ※  ※  ※

まず始めに、この度の東北地方太平洋沖地震により、
被災されたすべての皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。

3月11日、その日から連日報道される想像を絶する光景に言葉も無く、ただただ胸が痛く、悪い夢をずっと見ているような、いや、夢であってほしいと心の何処かで願いつつ、現実である事の残酷さに、何も出来ない自分におろおろとするばかりでした。

そしてその映像を見ながら、どうしても16年前の時の事を思いださずにはいられませんでした。
阪神大震災、被災した当事者の私達はテレビを見る事も出来ず、情報から閉ざされ、何が起ったのか把握さえ出来ず、どうなっているのか知らないもの同士に交わされる様々な憶測に避難先の体育館で不安と余震と寒さに震えていました。それでもその夜、すぐさま届けられたどこかの誰かが握ってくれた救援物資のたった一個の不格好で冷たかったけれど気持ちの入ったおにぎりに、何処かで誰かが自分たちをちゃんと見てくれている人がいるという安心感にホッとして嬉しくてお腹を満たすと同時に心も落ち着いてきたのを思いだします。

そんな時「少しおにぎりを分けて頂けませんか」と言う声が聞こえました。近くの障害者施設の職員の声でした。障害があるために避難所に来たくても来れない人が沢山いるとのこと。が、しかし、既におにぎりはあっという間に無くなり、もう一つも残っていなかったのです。支援が必要であっても避難所に来れない人がいる事、誰もが混乱し必死でそんな想像力を欠いていたのだ。

この度の震災でも多くの障害者が避難所へ行く事も出来ず大きな不安に押しつぶされそうになりながら過ごしていらっしゃるのだと思います、そんな阪神大震災を教訓に被災障害者を支えてゆくために設立された「被災障害者支援NPO法人ゆめ風基金」来年度のカレンダーの売り上げの5%はこの基金に寄付される事が決まったそうです。それは被災地にいる被災障害者の救援物資や生活再建のための義援金として送られるそうです。ちいさな金額かもしれませんがカレンダーで支援して下さる沢山の人の輪ができれば、きっと強い大きな力になるんだと思います。そして広がった大きな輪はお金だけではなく被災地に明日に繋がる希望も運ぶんだとも。

ふと、誰かがこんな事を言っていたのを思いだします。「神様は乗り越えられる試練しか人に与えない」それは困難に出会ったときの自分自身に言い聞かせる「願い」や「祈り」のような言葉かもしれないけれど、その言葉をいま困難を前にしているすべての方に送りたい。
「きっと乗りこえられる」と。

私は被災障害者のために多くの事は出来ないかもしれない、でも、今あるこの困難を乗り越えてほしい、そんな思いを沢山込めて、絵を描く事で皆さんに元気をお送りすることが出来るかもしれない。明日への希望や夢を届けることが出来るかもしれない。そんな思いを胸に今年は精一杯力を送れるような絵を描きたいと思っています。どうかそんなカレンダーを一人でも多くの皆さんに応援して下さると嬉しいです。阪神大震災のあの日のおにぎりのように誰かが漏れると言う事無く支援をお届けする事が出来るように。そして、あの時のおにぎりのように明日を生きる力と元気を被災地にお届け出来るように。

地球の大きさを思う時
宇宙の広さを思う時
人って、なんてちっぽけなんだろう
って、思う。

でも、ちっぽけでも、どんなに辛く、恐ろしく、悲しく、
困難なことが目の前に立ちふさがっても、
なんとか受け止め、そこから立ち上がる強さは、
非力ではあっても無力ではない、私達は。

きっと。
そこから新たな夢を紡ぎだすことが出来る、
そんな命のたくましさが私達の中にある。

そして、ちっぽけだからこそ、
みんなとても愛おしい。
どんな人も、どの人も。みんな。

カレンダーのタイトル「やさしいちきゅうのものがたり」は地球が優しいと言う絵を描いている訳ではなく、そこに住む人が作る世界が優しい物語で綴られることを願っているものだと私は思って描いています。みんなが明日の地球をやさしく綴れますように。
そんな思いを込めて。そして被災地の一日も早い復旧復興を願って。

松井しのぶ

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