われわれにとって平和は現実で、いのちを救うただひとつの道

「荒野に希望の灯をともす~医師・中村哲 現地活動35年の軌跡~」上映会・パネル展

 2019年12月4日、テロや紛争が続くアフガニスタンで人々の命を守り、生活を立て直すために、農業と雇用を生み出す用水路建設を進めた医師・中村哲さんが武装勢力に銃撃されて亡くなりました。
 1984年、医師としてパキスタンのペシャワールに赴任した中村哲さんは、「100の診療所より1本の用水路を」と、2003年よりアフガン東部で用水路の建設を始めました。井戸掘りから始まったその工法はアフガニスタンのひとたちが得意とする石積みや、日本の伝統的な工法で堰をつくったりと、アフガニスタンの現地の人々で維持、補修できるものでした。
 それはまた一日600人もの人々を雇用することになり、戦争の傭兵になることでしか生活が成り立たなかったひとびとの生活を支えることにもなりました。ガンベリ砂漠を潤す総延長25・5キロに及ぶマルワリード用水路を整備。砂漠は1万6500ヘクタールの緑の大地に生まれ変わり、稲穂、麦が育ち、65万人が帰農しました。
 中村哲さんの死はアフガニスタンの人々をはじめ世界中の人々に大きな衝撃と共に深い悲しみをもたらしました。
 中村さんの死から3年、ロシアによるウクライナ侵攻から一年、ウクライナ全土の建物、道路、農地が破壊され、ウクライナの兵士と市民のみならず、ロシアの兵士にも数多くの死者が出ています。理不尽で非情な侵略は世界をまたかつての冷戦と軍拡競争へと追い込み、国家間の覇権と暴力が無数のいのちを奪い、貧困と飢餓が世界各地の人々を苦しめています。
 日本社会に目を向ければ、7人に1人の子どもが貧困で、毎年2万人の人が自らのいのちを絶ってしまう現実があります。戦争のない平和な世界をつくりだすことと、自然と共生し持続可能な社会をつくりだすこと、国籍や戸籍や障害や性的マイノリティなどによって尊厳を脅かされず、だれも傷つけられることのない地域をつくりだすこととは、深くつながっているのだと感じます。
 里山に囲まれた能勢の町は、100年200年、農地と山林を守ってきた先人たちが日々の暮らしの中で育ててきた自然との共生と助け合いを宝物にしてきました。わたしたちは先人たちの叡智に学び、日本も世界も「力による平和」ではなく、「ともに生きる勇気を耕す平和」をつくりだすために今一度立ち止まり、中村哲さんがわたしたちに、また世界の人々に託した願いを受け止めたいと思うのです。
 わたしたちのまわりでも緊張が高まる今こそ、わたしたちもまた遠く紛争が続く世界各地と同じ空の下、同じ時代を生きていることを確認し、武器ではなくスコップと鍬で平和をつくる道を歩んだ中村さんの35年の足跡を追ったドキュメンタリー映画の上映会を開きます。

「荒野に希望の灯をともす~医師・中村哲 現地活動35年の軌跡~」上映会・パネル展

3月21日(火・祝) 淨るりシアター小ホール 
 〒563-0392大阪府豊能郡能勢町宿野28 TEL 072-734-0001
3月25日(土) さとおか防災コミュニティセンター
  〒563-0121 大阪府豊能郡能勢町地黄173-2
13:00~14:30 映画上映
14:40~15:30 トーク「中村さんを偲んで」
            西山浩司さん(ペシャワール会)
12:00~中村哲さんの足跡パネル展(16:00終了)
主催:映画「荒野に希望の灯をともす~医師・中村哲 現地活動35年の軌跡~」
   上映会・パネル展実行委員会
後援:能勢町・能勢町教育委員会・(社福)能勢町社会福祉協議会
協賛:関西よつ葉連絡会
協力:ペシャワール会・ペシャワール会北摂大阪