山桜の律義さを! 難波希美子と能勢ルネッサンス

例年より早い桜前線にさそわれて、能勢もすっかり春から初夏のにおいすら感じられるほどです。家々や田畑を囲む里山は新しい緑が吹き出て、ずいぶん前から発声練習していた鶯も春本番にふさわしい歌声を聞かせてくれるようになりました。
能勢にも桜の名所がいくつかありますが、わたしが毎年感動するのが里山にぽつぽつりと咲く山桜です。長い間、都市部で暮らしてきたわたしは山桜もハイキングの途中に見かけるだけでしたが、里山に囲まれた能勢では薄曇りのピンクの羽衣のように咲きはじめます。
ピンク色に恥じらうその姿は、あざやかな花びらを誇らしげに開くソメイヨシノとはおもむきがちがい、純情な色気を漂わせています。それは春の一瞬に一年分の恋文を届けるために降りてきた天女のようでもあります。
わたしは能勢に住んで10年になります。言葉でうまく言えませんが能勢はほんとうにいいところです。ただ、鉄道が山下駅、日生中央駅、それと豊能町を通って妙見口までで、能勢の山へはバスも少なく、車か徒歩でしか移動できません。
バスの窓から見える緑いっぱいの山や田畑を見ていると、子どものころに見なれていた風景と似ていて、とても懐かしく思います。あれから半世紀を生きてきて、なんのことはない、またもとの場所に帰って来たのかなと思います。
どこの地域でもそうでしょうが高齢化が進み、若い世代が流出し、人口が減る一方で、長い歴史をたどり、かけがえのない自然を守ってきた小規模農業も後継者不足で先行きが見えないこともまた事実です。
けれども、能勢の地をいろいろ歩いてみるとほんとうに素晴らしい所がたくさんあり、これからの社会のありようから言っても、能勢と同じく全国にたくさんあるいろいろな村が長い間培ってきた暮らしや文化が少しずつ見直されてもいいのではないかと思います。
そんなかけがえのない自然を次の世代に残す能勢の農林業の過去と今に学び、未来を耕す人々と手をつなぎながら、一方で誰も取り残されず、いろいろな人が助け合って生きる多文化共生の町づくりをめざして、難波希美子さんは今日もひた走り、立ち止まります。
今日からとうとう、路線バスの減便がはじまりました。

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