能勢ダイオキシン問題報告会

3月30日、能勢町行政がダイオキシン問題についての調査報告会を開きました。
報告会に提出された資料には、特に今年の1月末に大牟田での処理を断念してから2月16日に神戸市の業者がコンクリート固化し、23日に埋め立てるまでの一か月間に組合が情報を隠し説明責任を果たさないまま、性急で稚拙で乱暴な手法で物事を終わらせようとしたプロセスが克明に記載されており、遅ればせながら丁寧な調査をされたことがわかりました。

1997年6月、能勢町と豊能町2町によって設立された豊能郡環境施設組合が運営する豊能郡美化センターから国内最悪となる高濃度のダイオキシン類を排出しました。さらに測定日にダイオキシン濃度を減らす偽装工作をしていることが明らかになり、大きな社会問題になりました。この問題を受けて全国の小規模焼却炉が数多く廃止され、清掃工場の広域化が進むきっかけとなりました。一方能勢町では農作物の風評被害が発生し、美化センター内の汚染物質と周囲の汚染土壌の処理が問題となりました。
1999年6月には汚染された焼却炉の解体が開始され、施設内と周辺の汚染物は施設内に4659本ドラム缶に収納され保管されました。その後施設内での処理は進みましたが、最終的に未処理の198本について豊能郡環境施設組合と能勢町豊能町両町の重要懸案でありながら20年近い年月をかけても処理できませんでした。
昨年の4月30日、処理技術として鴻池組のジオスチーム法を採用することを決定し、豊能町内の処理予定地の住民説明会を6月13日に開催し、7月7日に豊能郡環境施設組合議会臨時議会において処理費用約6億4000万円を補正予算として上程しました。しかしながら地元住民との完全合意がなされていない状態で議会は延会となり、予算執行は保留になりました。ちなみにこの時点では処理費の8割は国の交付金で賄え、残りの2割を施設組合、つまり豊能町と能勢町で決められた配分で負担することになっていたそうです。

さてここからが今回の一連の問題のはじまりなんですが、豊能町の前町長が任期期間中にこの問題を解決すると公約していたこともあったのでしょうか、地元住民との折り合いがつかないことなどから、豊能郡環境施設組合は8月5日に地元処理の予算を撤回し、町外で処理するため、大牟田市の三池精練と処理契約を結びました。ところが地元の反対とされていますが最終的に門前払いとなりました。その時に一部で業者からのアドバイスがあったとされますが特別一般廃棄物から産業廃棄物として神戸の業者と委託契約を結び、コンクリート固化処理をし、神戸市の最終処分場に埋め立てられました。
そもそも一般廃棄物は、排出した自治体で処理するのが原則で、他地域で処理する場合は当該の自治体への事前通知が必要です。しかし産業廃棄物は排出した自治体で処理しなくてもよく、事前通知も必要ないということです。
神戸市が事前通知もなく一般廃棄物と産業廃棄物の混合物を無断で埋め立てたということで厳重抗議とともに撤去を求めたことで一連の問題が発覚したのでした。
組合が一般廃棄物から産廃に変えたのはなぜか。組合側は「(廃棄物を精査したところ)産廃の方が多かったので全体として産廃とした」としましたが、廃棄物処理法を所管する環境省は「(通常)一般廃棄物が産廃に変わることは考えにくい」と指摘しています。
このプロセスにおいて、廃棄物処分業の許可を持っていない仲介業者が9650万円の処理契約を結び、そのうち9000万円を受け取っていたことや、その業者のあっせんでコンクリート固化処理をした中間処理業者には249万円しか支払われておらず、その見積書も偽造されていたことがわかっています。
能勢、豊能両町にはダイオキシン類対策費として昨年12月、国から特別交付税約9000万円が拠出されていますが、総務省は交付税が適正に使われたかを精査する方針を示しています。
また、神戸市からの撤去と仮置き場への運搬などの費用が4500万円にもなり住民による住民監査請求がなされましたが、却下されています。

新町長のもとでコンクリート固化ではなく燃焼や溶融による、より無害化した最終処理を約束している能勢町の誠実で真摯な姿勢が表明された、とてもよい報告会でした。
以前、このブログで新町長が選挙の直前にダイオキシン問題を取り上げたことや、また旧来の区の機能をより強化する行政手法への疑問を書きましたが、少なくともダイオキシンの問題では、国や府や組合がコンクリート固化ですでに無害化がなされているという主張を退け、昨年の7月7日に組合が6億4000万円を予算化した「完全無害化」を成し遂げ、長年の懸案だったこの問題に決着をつける強い意志があるからこそ、今回の丁寧な報告会になったのだと思います。
報告後の質問では、9650万円の不可解な出費に対する疑問と怒りが噴出した一方で、今後どうするのかについて質問や提案がされました。
国がすでに今回の処理費用について9000万円を拠出したことと、それが適正であったのかを精査するとしていること、大阪府も安全であるとしている中で、風評被害もふくめて住民の不安を一掃し、溶融や燃焼による「完全無害化」を進めることを国や府が理解してくれるのか、その費用に対する特別交付税が担保されるのか、もしされない場合単費でも実行するのか、6億以上の費用をかけてつくるなら、その施設を他の自治体に利用してもらいお金を回収したらどうか、いや現在能勢町、豊能町、川西市、猪名川町の4自治体でつくっている国崎クリーンセンターで処理してもらうように要請をすればどうかなど、今考えられるいくつかの方策が提起されました。どれ一つをとっても実現が難しそうで、具体的な方策は示されませんでした。というより能勢町がどこまで主体的に提案し、実行できるのかがよくわからないことが問題なのだと思いました。
今回の丁寧かつ真摯な報告においても、現在は2町のダイオキシン汚染物の処理のためだけの特殊な自治体である豊能郡環境施設組合の意思決定が誰によっていつなされたのかがまったくわからず、一連のいきさつをその時々に知っている行政職員もほとんどいない感じでしたし、能勢町と豊能町の議員から派遣される組合議会すら知らなかったり、もしかすると副管理者の能勢町長ですら今回出された一連のプロセスをすべて知っていたのか疑わしい印象を持ちました。
今回の問題は組合と組合議会、組合と両町行政との関係がいびつで、まるで組合がブラックボックスで、事業の中身を吟味できないまま能勢町も豊能町も事業の費用負担のみが請求されるような印象なのです。組合の特殊性を鑑みても情報公開と説明責任を徹底してもらわなければ、住民がこの問題について考え、意思決定できないのではないでしょうか。
少なくともそうしていればたった一ヶ月の間に組合事務局が両町民を無視して一般廃棄物を産業廃棄物にしてしまい、コンクリート固化して神戸市の埋め立て地に埋めてしまう乱暴なことはできないはずだったと思います。
組合の構造的な問題がただされない限り、これからもまた町民だけでなく行政職員や議員もよくわからないまま組合の意志決定がなされ、今回のような問題がまた起こるのではないかと心配です。

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