希望のパッケージ 大椿ゆうこさんのこと

衆議院選挙では市民連合の後押しを得て「政権交代」を掲げた立憲、共産、社民、れいわの野党共闘に脅威を感じた与党が「体制選択選挙」とし、共産党へのいわれなき警戒心を誘導するようなマスコミ報道と、SNSによるフェイクや中傷を誘導しました。
新自由主義による格差が広がる中、コロナ禍であからさまになった医療体制の貧困から無念の死を遂げた人たち、今も後遺症に苦しむ人たちを目の当たりにして、明日は我が身と心を固く部屋に閉じこもる生活を余儀なくされているたくさんの人たちの中に私もいます。
非常事態宣言の元で街の経済が停滞し、支援金の額も少なくまた支給が大幅に遅れ、多くの非正規労働者の生活が切迫し、自民党への風当たりが強くなる中での選挙でした。
一方で岸田さんが恐る恐る掲げた「分配なくして成長なし」、「新しい資本主義」は別の波紋を呼び、その結果ただひとつ新自由主義の元での「成長と改革」を標榜した維新の会が大幅に議席を増やしました。人口当たり最大の死者を出していても、また大阪の経済が成長したとは言い難くても、「大阪で実現した改革を日本全体に広める」と喧伝し、巧みなマスコミ誘導によってつくりだした「吉村人気」が全国に及びました。その人気は爆発的と言ってよく、東京では維新候補の応援で吉村さんが来るというので、どこでもたくさんの人が集まりました。
命の危険におびえるひとたちがすぐそばにいても、福祉にお金をつぎ込む「大きな政府」よりは公的サービスの民営化など新自由主義を貫く「小さな政府」を主張した維新の会が大躍進した今回の選挙で、もしかするとこの国はルビコンの川を渡ってしまったのかもしれません。古くは中曽根臨調、小泉改革、安倍・菅政権を経て維新の会が主導権を得ようとする新自由主義はいつまで続くのか、その行方には何が待っているのか、それにあらがうために何ができるのか、次回の記事で考えたいと思います。

ともあれ刹那的で暴力の匂いまで漂う感情が増殖する中、大椿ゆうこさんは悪質なデマと理不尽な攻撃に合いながらも毅然と路上に立ちました。そして、コロナ禍で増える女性の自死に「命を絶った彼女は私かも知れない」と心を痛め、彼女自身も経験した非正規雇用で命をつなぐ人々に「ガマンすることも、ひとりで頑張り続けることももうやめよう」と声をかけ、「あなたはひとりではない、あなたの弱音こそが政治の課題」と訴えました。
彼女の言葉は多くの人々の投票行為には届かなかったかもしれません。しかしながら、街の片隅でうずくまり、政治に絶望するだけでなく人生に絶望していたかもしれないひとびと、助け合いの政治を必要とし、愛を必要とするひとびとの心にたしかに届いたことは間違いないと思うのです。
何人ものひとびとが電柱の陰で、締め切った窓の向こう側で、朝の通勤電車を待つホームで、家路に急ぐスーパーマーケットの入り口で、大椿ゆうこさんの街頭演説を聞き、勇気をもらったことでしょう。
わたしはずっと以前に豊中の市議会議員を務めた車いすを利用する入部香代子さんの選挙運動に参加させてもらったことがありますが、彼女が街頭演説をしていると何人か決って障害者や障害者のご家族が「相談に乗ってもらいたい」とかけよって来られました。大椿さんもまたさまざまな問題をかかえるひとたちから相談を受けたり手紙をもらったりしたようで、そのことは選挙のあざとらしさとは無縁の切実な共感を呼び起こした証しだと思いますし、同時に大椿さんはもとより、彼女とともに政治を変えようと真剣に選挙に取り組んだ人々の誇りでもあることでしょう。
もとより選挙は数を問うものですが、これは負け惜しみではなくわたしは一票一票にはそれぞれ重さがあり、大椿ゆうこと書かれた42165枚の投票用紙は、新自由主義がもたらした格差社会で生存権すら脅かされる人びと、「明日の希望よりも今日のパン」のために劣悪な環境で働かざるを得ない人びと、企業への就労を拒まれ、福祉という名の牢獄に閉じ込められた障害をもつ人びと、外国人技能実習という名目で劣悪な労働を強いられ、使い捨てにされる人びと、女性というだけで賃金格差と非正規雇用を受け入れ、コロナ禍で雇止めになり暮らしが成り立たなくなった人びと、未来が暗闇でしかなくなり、いのちを捨てる決心をしてしまいそうになるこどもたち、助けを求めることもできず「自己責任」という言葉にしばられて心を固くするわたしたちの叫びと悲鳴がぎっしり詰まっていたことでしょう。
だからこそわたしたちは、彼女彼ら、そして苦しみのさ中で身を潜めるまだ出会っていない人々と共に、切ない希望とささやかな夢、助け合えることの安心と自分らしくありたいという願いを分かち合い、次なる一歩を踏み出さなければと思うのです。

夢見る人 わたしはそうdreamer 明日の旅人さ
悲しい時もうれしいときでも 歩みを止めない
(夜明けのうた 宮本浩次)

宮本浩次「夜明けのうた」

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