労働者階級の希望になる政治家 大椿ゆうこさん

今の政治にもっとも必要なのは、昨今では青臭いと笑われるかも知れない理念を語れる純情な心

きみが生まれるとすぐに 奴らは劣等感を植えつける
考える時間も与えないようにして
あまりの苦痛の大きさに何も感じなくなってしまう
労働階級の英雄になるのは大変なことだ
労働階級の英雄になるのは大変なことだ

家では傷つけられ、学校では痛めつけられる
賢ければ憎まれ、馬鹿なら罵られる
ルールにも従えなくなるほど、気が変になるまで
労働者階級の英雄だなんて、大変なことだ
労働者階級の英雄だなんて、大変なことだ
 「A working class hero is something to be」作詞作曲 ジョン・レノン

 7月8日、大阪のPLP会館で「大椿ゆうこさんを励ます会&国会報告」が開催されました。
 大椿ゆうこさんは2019年の参議院選の比例区で選挙をたたかいましたが、この4月に「繰り上げ」当選し、残り2年の任期ですが参議院議員になりました。
 2019年から4年間、参議院選挙、衆議院選挙、参議院選挙と、選挙に明け暮れた毎日でした。クビを切られた非正規労働者の当事者として労働組合委員長を経て、労働問題を人権問題ととらえる広い視野を持ち、誰ひとり取り残されず、あらゆる差別と偏見とたたかい、たった一粒の涙を無駄にしない政治を実現するために国会に行こうと決意し、行動してきた悪戦苦闘の毎日だったことでしょう。
 彼女をそうさせてきた原動力はいわゆる権力欲や、また当選するための手練手管などとは無縁で、理不尽な事への激しく鋭い言葉からこぼれ落ちる、しなやかでやさしく、かぎりなく純情な心にあると思います。およそ既成の政治の社会、とりわけ家業としての世襲政治家が多い昨今の政治の世界では青臭いと笑われるかも知れない純情な心こそが、今の政治にもっとも必要なのだとわたしは思います。
 自己責任のもとでひとに頼ることも相談もできず、自死するひとが2万人を越え、ひとり親所帯の子どもの半数が貧困という閉塞した社会を変えるためには、理想を語ることをせせら笑う支配から解放される政治を実現しようとひたむきに突き進む大椿さんのような政治家こそが求められるのだと思うのです。
 その意味で、大椿さんの繰り上げ当選は彼女の幸運なのではなく、ここ10年ほどとりかえしのつかない袋小路へと追い込まれつつある状況から脱出する幾多のチャンスを逃したわたしたち、日本の戦後民主主義政治にとって奇跡ともいえる幸運なのだとわたしは思います。

かけがえのない個性を持つひとびとが当たり前に暮らし、助け合って生きる街や社会や国をつくる夢を持てる、稀有の政治家

 以前にも書いたと思いますが、わたしが大椿さんの存在を知ったのは教育合同労組の委員長を退任し、その年の参議院選挙に立候補すると表明した2019年春の事でした。
 わたしは組合のない職場でずっと働いてきて、障害者の活動を支援してくれた日教組や自治労に大変お世話になったにも関わらず、労働組合運動とはそれほど親しくお付き合いしたことはありませんでしたが、教育合同労組や北大阪合同労組など「一人でも入れる組合」には心情的に近しく感じてきました。
 2019年の集まりではじめて聴いた彼女の言葉には、困難に見舞われる人間に「その問題はあなたのせいではない」と励まし、寄り添い、その問題を押し付ける相手と共にたたかってきた歴史がうかがえました。
 次に会ったのはその年にあったLGBTQのパレードで、柔らかくしなやかな表情からこぼれ落ちる笑顔がすてきでした。「ああ、このひとはこの路上から立ち上がり、それぞれひとりひとりちがうところで生まれ育ち、かけがえのない個性を持つひとびとが当たり前に暮らし、助け合って生きる街や社会や国をつくる夢を持てる、稀有の政治家になれるひとなのだと思いました。そして、彼女と一緒に大阪の街を歩いていることがうれしくて、誇りに思いました。
 不正や差別を許さないと、心を揺さぶる鋭く熱い言葉でひとびとと彼女自身をも鼓舞する大椿さんと、こぼれ落ちる笑顔で人の心を懐深く受け止めるしなやかで庶民的な大椿さん…。わたしはそのふり幅の広い大椿さんの両端を2度の出会いで垣間見て、わたしの娘と同い年の就職氷河期世代であることもあり、それ以来気になる存在になりました。

氷河期世代の当事者だからこそ、すべてのひとの希望をたがやす政治の実現を

 以前話題になったNHKドラマ「半径五メートル」で、氷河期世代のインフルエンサーの言葉を思い出します。主人公の週刊誌の記者が「あなたが今、一番望んでいることは何か教えて頂けますか?」との問いに「謝ってほしい。全日本国民に謝ってほしい。」と言い放ちます。
 この言葉は、自己責任と押さえつけられてきた非正規雇用の女性たちの怒りが企業にとどまらず、社会全体に向けられていることを教えてくれます。
「明日の希望よりも今日のパン」のために劣悪な環境で働くひとびと。企業への就労を拒まれ、福祉という名の牢獄に閉じ込められるひとびと。外国人技能実習という名目で劣悪な労働を強いられ、使い捨てにされるひとびと。女性というだけで賃金格差と非正規雇用を受け入れ、雇止めになり暮らしが成り立たなくなるひとびと。未来が暗闇でしかなく、いのちを捨てる決心をしてしまいそうになるおとなたちとこどもたち。自分らしく生きることを阻まれ、仮の姿に身を隠さざるを得ないひとびと。市民として受け入れられないばかりか、この国で育った子どもまでも強制送還されるかもしれない恐怖と不安な日々を強いられるひとびと…。
 この4年間、街頭行動での大椿ゆうこさんの幾多の言葉は、新自由主義のもとで広がる格差と妬みと監視と差別のプラットホームからこぼれ落ちる命を救済するために立ち上がる、わたしたちの希望そのものだと確信します。
 そして、その希望を現実のものにするために、わたしたちはあきらめないでこの厳しい荒野を共に走り抜けなければならないのだと思います。
 今国会の報告として、「防衛財源確保案」「GX脱炭素電源法案」「入管難民法改正案」「マイナンバー法改正案」「LGBT理解増進法」などの悪法が次々と成立しました。なかでも「防衛産業強化法」は会派を共にする立憲民主党が賛成し、社民党はこの法案に反対でしたが、「退席」という形でしか対応できなかったことの悔しさを大椿さんは話します。
 会の終わりに、大椿ゆうこさんが「この議席はわたしだけのものではない、この議席は徹底して労働者のために生かしたい。そして、日本が戦争など絶対にしないように、共にたたかいましょう」と訴えると、大きな拍手につつまれました。
 その熱い言葉におもわず涙ぐんでしまったのはわたし一人ではなかったようです。
 「A working class class hero is something to be」。そう、大椿ゆうこさんは労働者階級の英雄になるのではなく、労働者階級の希望になる政治家であることを実感した一日でした。