波乱万丈なるも、息子からもらったプレゼント 丹波篠山の旅

里山・能勢から里山・篠山へ 心の果てまで連れてって

 9月18日、19日と、息子の車に乗せてもらって親子3人で丹波篠山へ旅行に行きました。息子は隣町の豊能町で、連れ合いとそのお母さんの3人で暮らしています。
 わたしたち夫婦はどちらも、箕面の障害者運動にかまけて、娘にも息子にも親らしいことをほとんどせず、申し訳なかったと思っています。それでも幸運なことに、娘も息子もこんな親には頼ってられないとしっかり自分の人生を切り開いてくれました。
 早くに家を出てそれぞれの人生を歩んできた子どもたちも40代後半となり、年老いたわたしたちのことを心配してくれるようになりました。
 今回の親子3人の小旅行も、そんな息子夫婦とそのお母さんの計らいで実現したのでした。運転で息子に負担をかけたくないこともあり、近場で日帰りでも行ける丹波篠山で一泊し、ゆっくりした旅にしようと出かけました。丹波篠山は豊能障害者労働センター在職時、まだ4町合併前に障害児教育関係や障害者の親の人たちが何度も訪ねてこられ、障害者の働く場づくりの参考にしていただいた縁で「障害者作業所集会」を篠山で開いたこともあり、なじみのある町です。

喫茶・美貴 鹿肉料理専門店・無鹿リゾート 奥丹波・山名酒造 バングラデシュ支援・だいじょうぶ屋

 台風の接近で両日とも雨かと思っていましたが、18日はほとんど雨が降らず、また行く道路もほとんど混まず、1時間たらずで最初の目的地である喫茶店「美貴」につきました。
 「美貴」に行くことになったのは、妻が5月まで開いていたリサイクルショップ「せ~のっ!」の2階の貸室を週に一度利用してくれた女性の家族が経営するお店だったからです。
 彼女は子どもさんをはるばる能勢の「きららの森のいえ」に預け、その間に喫茶店のすぐ横で夫さんが経営するガソリンスタンドの経理事務をするために、「せ~のっ!」の2階を利用されていました。「篠山に来ることがあれば」と言われていて、本人はお店にいないと知りつつ、伺ったというわけです。
 妻にとっては「せ~のっ!」で出会った彼女への夏休みの宿題を済ませた感じなのでしょう、用意していたレイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」を託けて、お店を出ました。
 そこから車で3、40分ほど、隣の丹波市の鹿肉料理のお店「無鹿リゾート」に行きました。田園地帯にポツンと立つ普通の農家を改造した建物で、とても感じのよい雰囲気でした。
 店内はジョン・コルトレーンのジャズが流れていました。店のスタッフの説明を聞き、わたしと息子はロースステーキ、妻はモモ肉の赤ワイン蒸しを注文しました。
 出てきた料理は派手さのないものの、前菜もメイン料理もとても丁寧に作られていて、ほんとうにおいしかったです。とくにステーキは絶品でした。肉はとても柔らかく、少し甘みがあるしっかりした味は、鹿のしなやかさを残していました。
 すっかり堪能し、ゆったりした時間を過ごし、お店を出ました。能勢も獣害の被害が大きい場所のひとつなので、ジビエ料理のお店があってもいいかなと思いました。
 それからさらに20分ほどで、次の目的地の山名酒造に向かいました。奥丹波という銘柄で知られるこの酒屋さんは生活クラブ生協を通じて時々買い求めるのですが、あっさりしたキレのよい純米酒を対寧につくっていて、能勢の秋鹿酒造と並ぶお気に入りの造り酒屋です。古民家風の、少し薄暗い雰囲気の所と思いきや工場もお店もすっきりした建物で、明るい店内にそんなに種類が多くない純米酒が並んでいました。値段も決して高くなく、秋ならではのお酒「ひやおろし」を、おみやげと別に宿での食事の時に呑むために買い求め、あとひとつは有機米でつくられたお酒と、いつも生協で買っているお酒も買いました。
 山名酒造から篠山に引き返すとすでに4時前で、観光客に人気の河原町妻入商家群をゆつくり見る時間もなく、あと一か所、2016年から3年開催したフリーマーケット「ピースマーケット・のせ」に出店されていた「だいじょうぶ屋」をたずねました。「だいじょうぶ屋」はバングラディシュを支援するNPO団体で、色鮮やかな綿のTシャツやパンツが店いっぱいにあり、奥ではおいしいパンや飲み物などの喫茶もありました。
 「だいしょうぶ屋」を出てスーパーで夕食の買い物をして、この日の宿に着きました。

宿に入れない!入口の鍵を開ける番号がわからない!

 ここからが大変でした。ネットで予約した宿は完全無人の宿で、チェックインの方法がわからず、中に入れないのでした。問い合わせの電話に何度かけてもつながらず、玄関横の壁に「チェックインの方法はここから」という案内にあるQRコードを読み取っても、わたしの持ってきたメール以上の情報しかでてきません。
 これはえらいこっちゃと焦りに焦り、わたしと妻が一触即発になるところ、なぜかとても冷静な息子が丁寧に操作してくれたのですが、それでもだめでした。
 ほんとうにもうあきらめかけ、最後にもう一度と思い電話し、留守番電話に入れたところようやく返事があり、玄関と部屋の鍵の暗証番号を教えてくれて、やっと中に入ることができました。この間1時間ぐらいたっていたでしょうか、「中に入れただけでこんなに幸せになったことはない」と、妻がしみじみと言いました。ほんとうにやれやれと疲れでぐったりしてしまいました。
 電話をもらった時にわかったのですが、直近に送られてきたメールの前に、玄関と部屋の鍵を開ける暗証番号が書かれたメール(おそらく予約完了メール)が送られていたらしく、わたしが見逃してしまったようでした。完全無人の宿に泊まったのは今回が初めてで、年寄りにはやはり普通の宿でなくては無理なようです。
 とにもかくにも、スーパーで買ってきた総菜とおいしいお酒で一息つき、ようやくくつろいだ時間を過ごせました。
 台風の影響で、夜中は昔ながらの建付けの宿に強い風が吹き寄せ、建具がガタガタいう中でなんとか眠りにつきました。

絶品!「あくさや」の栗餅と「みたけ」の鯖寿司

 一夜明けると今にも雨が降りそうで、台風が近づいているので、急いで帰り支度をすませ、西町の「あくさや」で噂の栗餅をお土産に買いました。土砂降りの雨の中、開店間際に飛び込み、けっこうたくさん買いましたが、ほんとうにおいしくて、日ごろお世話になっている近所の人たちに配るとすぐになくなってしまいました。
 その後、帰ってからの昼御飯用にと、鯖寿司店「みたけ」で昨日買いそびれた鯖寿司を買いました。江戸時代、若狭から続く「西の鯖街道」は、丹波篠山まで続いていました。
一塩された鯖は、丹波篠山に着く頃にはちょうど食べごろになっていたと言います。
 家に帰り昼ごはんに食べましたが、肉厚で新鮮な鯖にひかえめな塩気と酢かげんが絶妙で、ご飯がまた少し粘りがあり存在感のある鯖とよくなじみ、おいしくいただきました。

旅は人生のまねごと 過ぎ去るものほど美しい

 今回の旅では、もっと息子と話すことがあるかとおもいましたが、その場になるとそれほど話せないものです。それでも、より責任の重い仕事に就きストレスがたまらないはずはなく、連れ合いさんとそのお母さんが支えてくれてなんとか暮らせていることがよくわかりました。
 彼は大学自時代に合唱のサークルで活動したことで、仕事の面ではコミュ力が発揮され、また息抜きの面ではアコーディオンに熱心なことにつながっているのだと思います。
 わたしたちもこれからなにがあってもおかしくない年齢だということで気遣ってくれた今回の旅行でしたが、きっとお互いに「だいじょうぶかな」と心配することにもなりました。
 わたしがいわゆる「私生児」として社会的に不利益を感じたことがなかったのは、母がほんとうに一生懸命わたしと兄を育ててくれたからですが、出自から来るのか「家族のきずな」という感覚にとぼしい人間です。そのことでかえって、母に悲しい想いをさせてしまいましたが、子どもに対してはそれでよかったのだと思います。
 それでも、息子の運転で旅行に連れて行ってくれた今回の出来事は、忘れられない思い出になりました。

地域に愛される喫茶・美貴

鹿肉料理専門店・無鹿リゾート
奥丹波・山名酒造
バングラデシュ村 P.U.S JAPAN だいじょうぶ屋
ゲストハウス・KOMEYA

お菓子処・あくさや

あくさやさんが一番と評判のくり餅は栗きんとんで餅が包まれていて絶妙の味わいでした。
鯖寿司店・みたけ
夕方までなら、持ち帰りができるそうです。

  • 喫茶・美貴 丹波篠山市郡家846   電話079-552-3480 
    営業時間10:30~16:00
  • 無鹿リゾート 丹波市春日町下三井庄1017−1 電話0795-88-5252
           営業時間11:30~15:00 18:00~22:00
           定休日水曜日
  • 山名酒造 丹波市市島町上田211 電話0795-85-0015
         営業時間9:00~17:00
  • だいじょうぶ屋 丹波篠山市呉服町51 電話 090-8382-3131
            営業時間10:00~17:00 火曜日定休日
  • ゲストハウス・KOMEYA 丹波篠山市立町106番地2 各トラベルサイトで予約
  • お菓子処・あくさや 丹波篠山市西町7 電話079-552-0093
              営業時間8:00~18:00
  • 鯖寿司店・みたけ 丹波篠山市黒岡683 電話079-552-1385
             営業時間11:00~22:00

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