ドラマ「相棒」とフリージャーナリスト

「あなたのいう国益とはいったい誰のための益でしょう。一部の官僚や為政者がこのような親子から奪い取った利益を、国益とはいえません。ジャーナリストの核にあるのは、ふつうの人々に対する信頼です。この苦しみを知ればほっておけないはず、この理不尽をしれば怒りを感じるはず、その想いが世の中を変えていく、そう信じるからこそ、彼らは銃弾の飛び交う戦地にも立って報道をつづけているんです。そして、桂木りょうさんもまたこの国の前線に立っていました。ふつうに生きている人々のために、この国の巨大な権力を敵に回して、たたかいました!!」
この長いセリフは2014年元旦、テレビ朝日の「相棒 元日スペシャル ボアー」で杉下右京が犯人の公安幹部に向かっていうセリフです。
最近はやや違ってきましたが毎年、正月に放送される「相棒」スペシャルでは、国家や為政者、警察権力の犯罪をあばくストーリーが多く、反感を感じる人たちもいます。
しかしながら、わたしは反対に、毎回その時々の社会問題を積極的に取り上げ、それを娯楽大作としてプロデュースするこの番組に共感してきました。
この時は特定秘密保護法を背景にしていることはあきらかで、シングルマザーの貧困問題とそれにからんだ国家の犯罪を暴こうとするジャーナリストとそれを封殺、隠ぺいする警察権力との攻防を娯楽作品にまとめながら、サイレントマジョリティのひとりであるわたしにとてもたいせつなメッセージを届けてくれたと思います。
「知る権利」がある前に、困難とあらがう当事者をはじめとするふつうのひとびと、そして時には銃弾の飛び交う戦地に立ってでも「こんな理不尽なことがあることを知らせたい」と必死に願うジャーナリストたちが届けてくれる情報に、どれだけの切なさといとおしさとささやかな幸せを願う心が詰まっているのかを教えてくれるドラマでした。
今回、15年以上もイラク、シリアの紛争地の取材を続けて来られた玉本英子さんのお話から、紛争地に生きるひとびとの暮らしと過酷な現実、そしてささやかな幸せと平和を願うひとびとの心に触れることで、ここ数年で「戦争をしてもいい国」に急速に舵を切りつづけるわたしたちの国の在り方を考え直す機会にしたいと思います。

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