創造する表現のゆたかさや希望を生み出してくれる魔法の力を…。

3月に入ってすぐに、伊奈かっぺい&伊藤君子ライブのチケットが「ゆっくり」で初めて売れました。長年、豊能障害者労働センターを応援してくださっている方です。彼女は伊藤君子さんと同じ小豆島の出身とのことでした。
この30周年イベントの企画がやっと決まったころ、お買物をされたお客さんが「私、田舎っぺだからねぇ。こんなことをするのよ。」と。それがどんなことだったか忘れてしまいましたが「そうなんですか~いなかっぺさんなんですか。実は、こんど伊奈かっぺいさんが箕面に来てくれるんですよ。」と伝えました。うれしいことにお客さんは「私、伊奈かっぺいさんが好きなんよ!」と。まだ、チラシができていなかったので、後日機関誌を送らせていただくことにしました。ちょっとしたことで、つながりができ、会話がひろがります。まずは、出会うこと…。わたしたちの事業も外へ外へと、出会いを広げ、障害がある人もない人も、暮らしやすい街をつくっていくことだと思っています。
伊藤君子さんの津軽弁で唄う「My Favorite Things」を初めてきいたのは、3年前、久しぶりに訪れた京都のJAZZ喫茶でした。中年のサラリーマン風の方がリクエストをしていました。JAZZは、身体に素直にしみこんでくる感じがします。アルコールが身体をほんわかとめぐっていくような心地よさです。ジャズ通ではないのですが、ジャズは暮らしの中で、身近なものとして存在し続けてきました。

ジャズを聴きはじめた20代のころは、ジョン・コルトレーンのサックスもよく聞いていました。伊藤君子さんの津軽弁での「私(わ)の好きなもの」は、コルトレーンでおなじみの曲です。若い頃の京都での暮らしが蘇り、感傷的な思いと、衝撃的な新鮮さを感じました。長部日出雄さんの即興で延々と競演をする津軽三味線を描いた「津軽じょんがら節」の本を読んだ時に、“ジャズは、津軽三味線に通ずるんだ”と、思ったことが証明された感じがしました。長部さんの本では、「基本のフシを即興で変化させて演奏をする曲弾きには、必ず奏者の独創が入っていなければならない。ジャズと同ずですな」という言葉があります。また、津軽三味線は「一の糸で仰天(どんてん)、二の糸で音(ね)澄(す)み、三にシンミリ」とも書かれていました。伊藤君子さんの津軽弁での「My Favorite Things」は、馴染みのコルトレーンのそれとはまったく違い、まさに仰天でした。
「津軽弁には、ふるさとへの思いを、ジャズには、遠く輝くものへの憧れをかき立ててくれるものがある」と、伊藤君子さんは言います。私は、その遠い昔、仕事の休憩時間に、逃げ込むようにジャズ喫茶に行き、身体に染み込んでいく音を聴きながら、たまには夢の世界へと、あるときには、堂々巡りする思考の中で、奏でられる音に、果てしない闇の底へと突き落とされそうになりながら、やがて、その先にかすかな光を感じて、穴倉から出てくるように店をで、職場に戻る日々がありました。フェードアウトされようとしていた記憶がこのイベントを通して、今、また蘇ろうとしています。ジャズや津軽(方言)というものが生み出すものには、創造する表現のゆたかさや希望を生み出してくれる魔法の力があるように思います。
この30周年のイベントは、いろいろな人の様々な思いが何重にもかさなりあって、当日を迎えます。そのプロセスは、人と人のかかわりの中で、手から手へ、言葉=思いを添え、表現であり、対話を生み出していくものだと思います。
伊奈かっぺいさんの津軽弁の語りと、伊藤君子さん自身が生み出す独創的なジャズを聴き、様々な文化を感じる中で、長年、豊能障害者労働センターを支えてくださった方々や、このイベントで新たに出会うであろう方々とともに、被災された方へと思いをつなげ、一方的な支援ではなく、ひとり一人のそれぞれの地から始まる、新たな一歩へと踏みだす希望を育むことができる、素敵なひと時となることを願っています。
豊能障害者労働センター 北川恭子

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    3月に入ってすぐに、伊奈かっぺい&伊藤君子ライブのチケットが「ゆっくり」で初めて売れました。長年、豊能障害者労働センターを応援してくださっている方です。彼女は伊藤君子さ...

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